シンメトリーでソリッド・ブラスな椎名林檎(Ringo Sheena)、リオに参上。「逆輸入 〜港湾局〜(Gyakuyunyū: Kōwankyoku)」
2015年末の紅白歌合戦の椎名林檎「長く短い祭~ここは地獄か天国か篇~」の出来が衝撃的で、実は椎名林檎ばかり聴いていた今日この頃。
・2015年末紅白歌合戦、椎名林檎「長く短い祭~ここは地獄か天国か篇~」の映像。
http://48pop.blog.fc2.com/blog-entry-782.html
リオ五輪の閉会式でも何かやってくれるのではと期待していましたが、ここまでやるとは(というより、やらしてくれたとは)、さらにびっくり。
・Youtube上でNHKが公開中のリオ五輪閉会式で披露された2020年の東京大会プレゼンテーション。
https://www.youtube.com/watch?v=sk6uU8gb8PA
シンメトリーでソリッド・ブラスな女ねずみ小僧、椎名林檎、リオに参上、全部もってきましたという感じです。
2015年末紅白歌合戦、椎名林檎「長く短い祭~ここは地獄か天国か篇~」の何が素晴らしいかというと、まずはシンメトリーなビジュアル。
椎名林檎のパートナー児玉裕一のねぶた祭りと花火の映像、きゃりーぱみぱみゅもてがける飯島久美子の衣装、マドンナのツアーに引き抜かれたと話題のAyaBambi のダンス、PerfumeとBABYMETALでおなじみMIKIKO振付によるelevenplayの「おわら風の盆」風ダンス、そして幼少期はバレリーナを志していたという椎名林檎自身のダンスもAyaBambi に負けず劣らずの多芸ぶり。
そして、(私にとっては元JAGATARA)、村田陽一編曲のタイトなブラス・サウンド。
村田陽一は、椎名林檎作品には、「りんごのうた」収録「la salle de bain」(2003年)から、斉藤ネコ編曲作品、服部隆之編曲作品で、トロンボーン奏者として参加していましたが、セルフ・カヴァー・アルバム「逆輸入 〜港湾局〜(Gyakuyunyū: Kōwankyoku)」(2014年)の6曲目「望遠鏡の外の景色」の編曲を任せられてからは、管楽器部分だけのこともありますが編曲を任せられることが激増中。
オリジナル・アルバム「日出処」(Sunny )(2014年)では、「静かなる逆襲」「赤道を越えたら」「ちちんぷいぷい」の3曲、両A面シングル「長く短い祭/神様、仏様」(2015年)、椎名林檎作詞作曲のSMAPのシングル「華麗なる逆襲」(2015年)の編曲に抜擢。
村田陽一のタイトなホーン・アンサンブルが椎名林檎に本当によくあっていて、東京事変解散、第二子出産後の椎名林檎の「逆襲」の原動力といってもよい貢献ぶり。
そして、リオ五輪閉会式での2020年の東京大会プレゼンテーション。
最初の「君が代」の洗練された編曲にびっくりしますが、後から調べると三宅純(Jun Miyake)の編曲で、ブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団(Cosmic Voices from Bulgaria)が歌っている「本物」のブルガリアン・ヴォイスとのこと。
2015年6月の東京のグランドデザイン検討委員会(第1回)の椎名林檎の提出資料に、「海外で活躍する日本のみなさま」として、AyaBambi等と並んで、三宅純(Jun Miyake)が挙げられていますので、椎名林檎のアイディアによる起用であることは間違いないでしょう(ブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団に歌ってもらうのは三宅純のアイディアのような気がしますが)。
次の、日本のアスリート、アニメキャラクター、ゲームキャラクターが登場する映像部分は、ロサンゼルス・オリンピック(1984)の開会式を小学生の時に見てこの道を志したという児玉裕一の手によるもので間違いなく、旦那の夢をかなえさせるという「内助の功」にも恐れ入ったり。
序盤の曲は、「日出処」(Sunny )(2014年)収録「ちちんぷいぷい」で、再アレンジ・再演奏だったようですがほとんどそのままに聞こえたのでびっくりしましたが、さらにびっくりしたのが安倍総理登場部分からの、H ZETTRIO(エイチゼットリオ)「Beautiful Flight」(2015)収録曲「Neo Japanesque」~「Get Happy!」。
H ZETTRIOは、PE'Zのメンバー、東京事変の第1期メンバーにして、椎名林檎のお気に入りのキーボーディスト、ヒイズミマサユ機のピアノ・トリオ。
ヒイズミは、2015年末紅白歌合戦「長く短い祭~ここは地獄か天国か篇~」でも、歌合戦なのにいいのかよ的にキーボード・ソロを任されていた人物です。
その後、Rhizomatiks(ライゾマティクス)の真鍋大度のAR(拡張現実)、MIKIKOの振付による青森大学男子新体操部とelevenplayのダンス、中田ヤスタカの音楽、いわゆるチーム・Perfumeのコーナーをはさんで、エンディング部分は、オリジナルはNODA・MAPの舞台演劇「エッグ」の劇中曲で、CD化された苺イチエ(深津絵里)名義「毒苺」(2012年)に収録され、「逆輸入 〜港湾局〜(Gyakuyunyū: Kōwankyoku)」(2014年)で椎名林檎によりセルフカヴァーされた「望遠鏡の外の景色」。
オリジナルは、SOIL&"PIMP"SESSIONSの編曲・演奏でしたが、リオのものは、「ちちんぷいぷい」を含めて、村田陽一編曲で、SOIL&"PIMP"SESSIONSの演奏とのこと。
私は、「逆輸入」版が好きですが、「リオ」版は、「オリジナル」版に近いアレンジのような気がします。
椎名林檎のオフィシャル・サイトによれば、「バート・バカラックのワルツから得られる、何とも言い難いショック」に影響を受けて作った曲とのことですが、次の曲のようなイメージなのでしょうか?
・Youtube上のバート・バカラック(Burt Bacharach )作、「素晴らしき恋人たち(Wives and Lovers)」のジョージ・デューク(George Duke ) 、David Sanborn(デヴィッド・サンボーン)との1980年代のライブ映像。
https://www.youtube.com/watch?v=fKg2ylPC7a0
このエンディング部分は、村田陽一のホーン・アレンジ、MIKIKOの振付によるelevenplayのダンス、飯島久美子の衣装と、2015年紅白歌合戦、そして2014年紅白歌合戦(衣装と旗振り)が伏線になっていたのかと思わせる、NHKのアナウンスではないが、「椎名林檎ワールド」。
椎名林檎、よくやったというより、よくやらせたという感じのリオ五輪閉会式、2020年の東京大会プレゼンテーション、「先攻エクスタシー」、充分に感じさせていただきました。
| 固定リンク
« 今年も厚い。財務省主税局総務課課長補佐 波戸本 尚ほか「改正税法のすべて 平成28年版」 | トップページ | 磨き続ける職人芸、今年も学ばせていただきます。イデミ・スギノ(HIDEMI SUGINO)」の2016年 クリスマスケーキ 「フィースト(Feast)」と 「ラウレッタ(Lauretta)」 »
「音楽等(やや通向)」カテゴリの記事
- アカウンティング&ミュージック 2022年邦楽再発・再編集等ベスト3。第3位:かの香織(Caoli Cano)「CAOLI CANO COLLECTION」(2023.01.04)
- アカウンティング&ミュージック 2022年邦楽再発・再編集等ベスト3。第2位:ポータブル・ロック(Portable Rock)「PAST&FUTURE ~My Favorite Portabel Rock」(2023.01.04)
- アカウンティング&ミュージック 2022年邦楽再発・再編集等ベスト3。第1位:久保田麻琴と夕焼け楽団(Makoto Kubota&The Sunst Gang)「ライブ・ベスト&モア(LIVE BEST&MORE)」(2023.01.04)
- アカウンティング&ミュージック 2022年洋楽再発・再編集等ベスト3。第3位:スクリッティ・ポリッティ (Scritti Politti)「Cupid & Psyche 85( キューピッド&サイケ85)」(2023.01.03)
- アカウンティング&ミュージック 2022年洋楽再発・再編集等ベスト3。第2位:オインゴ・ボインゴ(Oingo Boingo)「Good for Your Soul (2021 Remastered & Expanded Edition)(グッド・フォー・ユア・ソウル)」(2023.01.03)
コメント
椎名林檎という人選、落としどころとしては上出来ではありませんか。
国際的な大舞台で、海外目線からの期待に応え、かつそれなり洗練されたジャパネスクイメージをアピールせねばという状況では、これくらいの塩梅が。
芸能界の力学だけで、海外から見たら「でもどこがJAPAN?」となるような凡庸な(下手すりゃ稚拙な)ポップになるより全然よかった。三味線や和太鼓のアーティストなども今さらで、新鮮な演出がかえって難しそうですし。
ブルガリアンヴォイスは三宅純の近作では常連ですので、まず彼のアイデアでしょうね。君が代はどうにもチル系で、スポーツイベントで血が湧かないのはそりゃ仕方ないですが、ブルガリアンヴォイスによる異化効果はちょっと目からウロコでした。とび道具的な発想ではありますけど。
老眼が進んで濁点と半濁点が見分けづらくなり、ソリッド・プラス(+)って? と思ってましたが、村田陽一solid brassだったのか。懐かしい。
などといいつつ、五輪にまるで興味がなく、この記事で閉会式の具体的な内容を知ることができました。(消極的なスタンスだと「安倍マリオ」ぐらいしか耳に入ってきません。)
投稿: MYB | 2016年8月29日 (月) 20時14分
MYBさん、コメントありがとうございます。
久しぶりのブログ更新なのにすばやい反応、驚くとともに感謝いたします。
村田陽一アレンジの椎名林檎はどこかで書かなきゃと思っていたらのこの快挙。
ただし、日の丸や椎名林檎が嫌いな人でも大絶賛の三宅純と比べ、村田陽一への賞賛が少ないのが残念。
布袋寅泰の最新ベスト盤セルフ・ライナーでの、「TRICK ATTACK-Theme of Lupin The Third-」のブラスアレンジを頼んだ村田陽一の紹介文がその魅力を的確に表していますので引用を。
「複雑な和声とインパクトのあるラインを作る天才」で、ミックスを担当した、アート・オブ・ノイズ等のトレヴァー・ホーンの右腕、スティーヴ・リプソンも「こんなにタイトなブラスセクションは聴いたことがない」と驚いていたとのこと。
亀田誠治、斉藤ネコもそうですが、椎名林檎で男を上げた音楽家だと思います。
投稿: AccountingMusic | 2016年8月30日 (火) 01時52分
「MUSIC MAGAZINE 2016年11月号」の松山晋也によるインタビュー、
そして、下記のサイトのインタビューでも三宅純が語っていますが
http://arban-mag.com/interview_detail/59
どうやら、ブルガリアン・ヴォイスで歌ってもらうのは椎名林檎のアイディアだったようですね。
受けて立った三宅純もプロの中のプロ、重ね重ね賞賛させていただきます。
ところで、80年代DCブランドっぽい三宅純のファッション、当時の服をオーダーで再現して50着持っているとのこと。
恐るべし、三宅純です。
投稿: AccountingMusic | 2016年11月 3日 (木) 22時45分