民事再生法の正しい理解に活用するのに最適な統計値。山本和彦、山本研(編集)「民事再生法の実証的研究」
山本和彦、山本研(編集)「民事再生法の実証的研究」(2014年3月)。
以前に当ブログで一部ご紹介したNBLの連載の単行本化。
本書の対談でも指摘の通り、民事再生事件はここ4年ほどで激減(ピークは2001年の1,019件、次が2008年の935件で、2013年は過去最低の335件)。
金融円滑化法や中小企業支援協議会スキームにより、すっかり影の薄くなった民事再生法ですが、その実態が債務処理スキーム選択において理解されているかは疑問。
民事再生法の正しい理解に活用するのに最適な統計値です。
■民事再生法の成功率についての誤解
税務会計の専門書などで目にするのが、民事再生法を申したてた会社のほとんどが破産に至っているとか、自主再建型の民事再生法はほとんど成功していないという、根拠の明示が無い風説的な言及。
詳しくは本書をご覧いただきたいのですが、合計では、調査データ313件の内、認可前廃止が39件(12.5%)、再生計画案の提出有りが274件(87.5%)、再生計画案が付議されなかった事件が9件(2.9%)、認可決定確定が258件(82.4%)、認可決定後廃止が26件(8.3%)、終結決定が232件(74.1%)。
本書は、開始決定された事件を調査しているので開始率には触れていませんが、以前に当ブログでもご紹介した、民事再生実務合同研究会 「民事再生手続と監督委員」商事法務(2008年)の東京地裁民事第20部における2000年~2006年のデータは参考までですが、95.3%。
乱暴ではありますが民事再生法の成功率を目安として試算すると、95.3%×74.1%=70.6%で約70%といったところで、これは、 「民事再生手続と監督委員」の成功率69.2%とほぼ同じです。
また、本書によれば、自主再建型スキームに絞ると、再生計画案の提出有りが161件、再生計画案が付議されなかった事件が3件(3件/161件=1.9%)、認可決定確定が156件(156件/161件=96.9%)、認可決定後廃止が19件(19件/161件=11.8%)、終結決定が137件(137件/161件=85.1%)。
同様に、乱暴ではありますが民事再生法の成功率を目安として試算すると、95.3%×87.5%×85.1%=71.0%で約70%といったところで、自主再建型だからといって成功率が低いということはどうもなさそうです。
■上記から感じること
債務処理スキーム選択において、本書の統計の活用により、民事再生手続が正しく理解されることを期待いたします。
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