今年も事業再生に関する税制改正がありました。与党の平成26年度(2013年)税制改正大綱決定
2013年12月12日、自民党、公明党の両党は、平成26年度(2013年)税制改正大綱を決定しました。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/123161.html
既に新聞等で報道されている通り、主要な改正点は、
復興特別法人税の前倒し廃止
資本金1億円超の法人の飲食費のうち50%を損金算入できる制度の導入
年収1,200万円超と1,000万円超に対する給与所得控除の上限の段階的に縮減
ゴルフ会員権の譲渡損失の損益通算の平成26年4月1日以後譲渡から廃止
消費税の「簡易課税制度のみなし仕入率」の平成27年4月1日以後に開始する課税期間からの金融業及び保険業は50%、不動産業は40%への引き下げ
といったところです。
私の注目点は、事業再生に関する部分で、今年もいくつかありましたが、中でも個人の債務免除益課税に関する所得税についての租税特別措置が気になりました。
■個人の債務免除益課税に関する所得税についての租税特別措置(大綱P38、地方税P43)
(1)個人が、その有する債務について免除を受けたことにより生じる経済的な利益について、次の措置を講ずる。
① 事業を営む個人が、その有する債務につき、債務処理に関する計画で一般に公表された債務処理を行うための手続に関する準則に基づき作成されていることその他の要件を満たすものに基づき免除を受けた場合において、当該準則に定められた方法により減価償却資産及び繰延資産等の評定を行っているときは、これらの資産の評価損の額に相当する金額は、その免除を受けた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する特例を創設する。ただし、当該必要経費に算入する金額は、この特例を適用しないで計算したその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額を限度とする。
② 個人が、その有する債務につき、破産法の規定による免責許可の決定、再生計画認可の決定その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる事由により免除を受けた場合には、当該免除により受ける経済的な利益の額については、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。ただし、当該経済的な利益の額のうち、次に掲げる金額に相当する部分については、この限りでない。
イ 当該免除を受けた年において、当該経済的な利益の額がないものとして当該債務を生じた業務に係る各種所得の金額を計算した場合に当該各種所得の金額の計算上生じる損失の金額
ロ 当該免除を受けた年において、当該経済的な利益の額を当該債務を生じた業務に係る各種所得の金額の計算上総収入金額に算入して計算した場合に、その生じる各種所得の金額から純損失の繰越控除により控除すべきこととなる金額
■上記から感じること
・①一定の債務処理手続による債務免除益に対応する資産の評価損の計上
従来、法人税については、「合理的な再生計画」 に基づき、再生企業が金融機関等から債権放棄を受ける場合、再生企業の「債務免除益」に対する課税が再生を妨げることのないよう、資産の評価損の計上を行うことができました。
しかし、個人事業者の所得税制(事業所得)については、合理的な再生計画に基づき、金融機関等から債権放棄を受ける場合であっても、資産の評価損の計上ができませんでした。
そこで、金融庁の要望により、ようやく個人事業者の所得税制(事業所得)でも、一定の債務処理手続による債務免除益に対応する資産の評価損の計上が認められるようになります。
・②資力喪失の場合の債務免除益の非課税
この部分は、「破産法の規定による免責許可の決定、再生計画認可の決定その他」という部分が明示されたものの、従来の所得税基本通達36-17とほとんど変わりはないようにも思えます。
法令解釈通達から、法令へ格上げになるとともにより明確化されるということでしょうか?
今後の改正法、政令、省令等の公表を待ちたいと思います。
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