日本のフォーク・ロックの荒野を切り開いた天才の本質、「エゴ」。加藤和彦 (Kazuhiko Kato)(著)、前田祥丈(Yoshitake Maeda) (著)、インタビュー/ 構成:前田祥丈 (編集)、牧村憲一(Kenichi Makimura) (監修) 「エゴ~加藤和彦、加藤和彦を語る」
加藤和彦 (Kazuhiko Kato)(著)、前田祥丈(Yoshitake Maeda) (著)、インタビュー/ 構成:前田祥丈 (編集)、牧村憲一(Kenichi Makimura) (監修) 「エゴ~加藤和彦、加藤和彦を語る」(2013年7月)。
音楽評論家、前田祥丈が1993年に行ったものの、安井かずみ(Kazumi Yasui)の看病による加藤和彦の活動停止によりお蔵入りになってしまっていたという幻のインタビューが、サディスティック・ミカ・バンド結成直後のアコースティック・ライヴ(1972年4月共立講堂)音源CD付で登場。
「エゴ」というタイトルが秀逸。
帯に書かれているように、「自らの表現を貫こうとする矜持」という意味で使われているようですが、日本のフォーク・ロックの荒野を切り開いた天才の本質を実に的確に言いえているのではないでしょうか?
今までに公表された加藤和彦 (Kazuhiko Kato)の音楽的側面からのインタビューとしては以前に当ブログでご紹介した、「ロック画報 (16) 特集 ザ・フォーク・クルセダーズ リターンズ」(2004年6月)、「ロック画報 (17)特集 めんたいビート」(2004年9月)が網羅的かつ詳細なものでしたが(「文藝別冊 加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)」(2010年2月)にも再録)、ほぼそれに匹敵するロング・インタビュー。
おおまかなところはほぼ同じ内容ですが、インタビュー時期の違い、聞き手の違い、公表時期の違いからか、新しい発言、生前ではおそらく書きにくかったであろうより生々しい発言や聞き手による分析が数多くあり、ファンには実に興味深い一冊です。
例えば、大島渚監督「帰って来たヨッパライ」(1968年)で衣装のサイズが気に入らないことから監督と喧嘩になり1週間ぐらい失踪した話(衣装を作りなおさせて復帰)、サディスティック・ミカ・バンド(Sadistic Mika Band)で服部良一(Ryoichi Hattori)作品集を作りたかったがコロンビアとの問題で実現できなかった話、サディスティックス(sadistics)「サディスティックス(sadistics)」(1977年)をつまらないよと一蹴していること、東芝EMIからワーナーへ移籍したのは実は新田和長(Kazunaga Nitta)に「あの素晴らしい愛をもう一度」みたいのが一番いいと言われたからという話などなど。
また、本書を読むと、日本のフォーク・ロックの荒野を切り開いた天才としての加藤和彦 (Kazuhiko Kato)の功績、280万枚も売り上げた自主制作盤にして自作自演作の「帰って来たヨッパライ」(1967年)の日本のザ・ビートルズ(The Beatles)的衝撃、その印税を使ってのギンガム創設による日本へのPAシステム導入、アーティスト・レーベルであるドーナツ・レコード創設なども改めて確認できます。
ロックとは既成概念を突き破る精神とするならば、エゴを強烈に放つ加藤和彦 (Kazuhiko Kato)こそが、日本のロックを最も体現した人物なのかもしれません(内田裕也に「HOT! MENU」(1975年)のジャケット写真に使われた麻布十番湯に朝11時によく呼び出されたという話も出ていますが)。
私にとってはやっぱり何年たっても気になる人物、加藤和彦 (Kazuhiko Kato)関連の音源、文献の再発掘、今後も期待させていただきます。
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コメント
別件ですみません!
コントロヴァーシャル・スパークが
実に最高なので、
ぜひ!レビュー待ってます!
投稿: C3PAPA | 2013年8月31日 (土) 08時41分
C3PAPAさん、コメントありがとうございます。
記事に強引に結び付けるならば、1980年代初頭、加藤和彦と同じパーマ・ヘアだった鈴木慶一のニュー・グループですね。
EPが発売になっているようですが、amazonで取り扱いがないのでdisc Unionから取り寄せてみます。
http://diskunion.net/jp/ct/detail/IND13310
投稿: Accounting&Music | 2013年8月31日 (土) 22時35分
コントローヴァーシャル スパークスはずばり、《夢の晩餐》ではないか?、ダントツで。
Koroneのボーカルの、甘ったるい魅力が一番出ている気がします。
投稿: tommy_sasuga | 2014年2月11日 (火) 16時24分
tommy_sasugaさん、コメントありがとうございます。
Controversial Spark、新曲3曲が加わったCDが出ましたね。
大変申し訳ありません。
Controversial Sparkも、No Lie-Senseも、当ブログではパスとさせていただきます。
投稿: Accounting&Music | 2014年2月15日 (土) 23時27分