簡潔かつ的確な会計税務解説の達人によるタイムリーな1冊。太田達也(著) 「事業再生の法務と税務」
太田達也(著) 「事業再生の法務と税務」(2013年6月)。
3月31日の中小企業金融円滑化法の期限終了を受け、政府および行政庁は様々な施策を実施。
中でも、中小企業経営力強化支援法に基づく「経営革新等支援機関」の認定制度の創設(私も認定済です)、全国の中小企業再生支援協議会での「経営改善支援センター」の設置と経営改善計画策定支援に係る費用の3分の2 (上限200万円)を負担するという予算的措置は大きな話題で、我々税理士、公認会計士業界では「事業再生」ブームが勃発。
そのような状況の中、簡潔かつ的確な会計税務解説の達人、太田達也公認会計士・税理士によるタイムリーな1冊が登場です。
■本書の内容
財務内容改善のための手法に係る法務・税務、事業譲渡や会社分割の活用によるM&Aの活用(法務・税務その他の留意点)、第二会社方式の活用と留意点、第三者が関与する私的整理、企業再生税制の適用など、中小企業の事業再生のために必要な知識やノウハウを総合的に解説。
当然のこととして、平成25年度税制改正による「企業再生税制の改正についても言及。
特に重要なのが、評価損益を計上に適しない資産の範囲からの少額資産の除外。
平成17年税制改正以来、再生計画認可の決定があったことその他これに準ずる一定の事実が生じ、一定の資産評定を行っている場合で、法人税法施行令24条の2第1項の要件を満たしているときは、資産の評価益の益金算入(法人税法第25条第3項)および資産の評価損の損金算入(法人税法第33条第4項)が認められます。
平成25年度税制改正では、従前の評価損益の額が1,000万円(有利子負債の額が10億円未満の場合は100万円)未満の資産について評価損益計上の対象外とする取扱いが遂に廃止され、それに代わって少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(法人税施行令第133条)または一括償却資産の損金算入(法人税133条の2第1項)の規定の適用を受けた減価償却資産ならびにその他これに類する減価償却資産が資産の評価損益計上の適用対象外とされました。
■上記から感じること
評価損益を計上に適しない資産の範囲からの少額資産の除外は、ようやく改正になったかというほど、実務上、大変重要な出来事。
従来は、資産の評価益の益金算入(法人税法第25条第3項)および資産の評価損の損金算入(法人税法第33条第4項)は利用しづらい規定で、実務上もあまりみかけませんでしたが、今後は大いに活用されることになるでしょう。
民事再生手続でも、従来は、評価損益を計上に適しない資産の範囲に少額資産が含まれることから、開始決定時損金経理方式(損金経理方式)(法人税法第33条第2項)による評価損の計上が多く利用されてきましたが、今後は認可決定時別表(申告調整)方式による評価損の計上の利用の方が多く用いられることになるでしょう。
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