加藤和彦(Kazuhiko Kato)を読み解く2冊。島崎今日子「安井かずみがいた時代」、牧村憲一「ニッポン・ポップス・クロニクル」
牧村憲一「ニッポン・ポップス・クロニクル」(2013年3月)。
加藤和彦(Kazuhiko Kato)を読み解く2冊の書籍が続けて発売。
以前に当ブログで告白したとおり、少年時代、自分の趣味形成にあたって実は最も影響を受けたのかもしれない加藤和彦(Kazuhiko Kato)、一気に読み上げてしまいました。
島崎今日子「安井かずみがいた時代」(2013年2月)は、元々は「婦人画報」2010年11月号から2012年7月号までに連載されていたもの。
20名を超える関係者の証言をもとに安井かずみの人生にどんどん迫るノンフィクション。
作者の島崎今日子の調査分析力は迫力満点で、まるで女「吉田豪」かとびっくり。
本書と裏表の関係にあるかもしれない加藤和彦の関係者の証言による書「文藝別冊 加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)」(2010年2月)で、ほぼ私と同世代の菊地成孔が語っていた、少年時代に受けた加藤和彦のある種の貴族性の衝撃と後から振り返ってみて感じる違和感という疑問が解き明かされます。
個人的には、両者をよく知る吉田拓郎(Takuro Yoshida)の証言がすごく面白いこと、本書に直接書いてあるわけではありませんが「パパ・ヘミングウェイ(Papa Hemingway)」(1979年)の再発CDで佐藤奈々子(Nanako Sato)の歌が消された「 レイジー・ガール(Lazy Girl)」のオリジナルとは違うマスターが使われているのはもしかしてそういうことなのかと想像してしまったことが特に印象的。
牧村憲一「ニッポン・ポップス・クロニクル」(2013年3月)は、加藤和彦(Kazuhiko Kato)についての本ではありませんが、当時の所属事務所「OUR HOUSE」の社長として、竹内まりや(Mariya Tkeuchi)のデビュー、ヨーロッパ3部作に関与した牧村憲一の回顧録。
こちらは、趣味の良さあふれる甘い語り口。
加藤和彦についての特筆点としては、高校時代からの友人であり映像作家・アーティストの宮川一郎の証言。
1960年代の日本のフォーク・ミュージシャンはボブ・ディラン(Bob Dylan)ではなくピーター・ポール・マリー(Peter, Paul and Mary)に憧れて音楽を始めたこと、「スーパー・ガス」(1971年)収録「不思議な日」のヴィブラートのかかった歌唱は、つのだ☆ひろが背中を小刻みに叩かせて歌ったことなどの逸話が面白い。
「ヨーロッパ3部作」加藤和彦(Kazuhiko Kato)と、「蒼茫」山下達郎(Tatsuro Yamashita)が一時期なぜ同じ事務所(スマイル・カンパニー)に所属していたのか今思うと不思議ですが、それは牧村憲一がいたからだと納得。
加藤和彦(Kazuhiko Kato)について改めて思うのは、「モーレツからビューティフルへ」の時代の寵児であったということであり、裏を返せばその後の低成長ながら誰でも比較的容易に豊かさを手に入れられるようになった時代はさぞかし生きにくかっただろうということ。
You Tube上の「モーレツからビューティフルへ」のCM映像を見ながら合掌。
http://www.youtube.com/watch?v=2hiCJVEQveE
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