破産管財人の報酬の源泉徴収所得税は破産者名で所轄税務署に納付の、最高裁判後の準公式見解?若林孝三、有賀文宣、吉田行雄、中津山凖一共編「平成23年度版 実例問答式 役員と使用人の給与・賞与・退職金の税務」
我が事務所の常備本、 若林孝三、有賀文宣、吉田行雄、中津山凖一共編「平成23年度版 実例問答式 役員と使用人の給与・賞与・退職金の税務」が、平成21年度版を改訂する形で発売(2011年10月)。
私が注目したのは、以前に当ブログでもご紹介した、破産管財人が自らに支払う管財人報酬についての源泉徴収義務を負うと最高裁の初判断(最高裁 2011年01月14日 平成20年(行ツ)236号)を受けて、当該問題がどのように触れられているかです。
■破産管財人が自らに支払う管財人報酬についての源泉徴収義務
若林孝三、有賀文宣、吉田行雄、中津山凖一共編「平成23年度版 実例問答式 役員と使用人の給与・賞与・退職金の税務」(2011年10月)ですが、破産管財人が自らに支払う管財人報酬は弁護士の職務に係る報酬として、破産管財人は、支払いの際に源泉徴収し、破産者の名において所轄税務署に納付することになると明記。
■上記から感じること
2011年01月14日付最高裁判決は、「破産財団を責任財産として、破産管財人が、自ら行った管財業務の対価として、自らその支払いを受けるのであるから、弁護士である破産管財人は、その報酬につき、所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり、同項2号の規定に基づき、自らの報酬の支払いの際にその報酬について所得税を徴収し、これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。」と判断しているため、破産者ではなく、破産管財人である弁護士の名義で弁護士事務所の所在地を納税地として源泉所得税を納付するのかという疑義が生じていました。
これについて、最高裁判決後に刊行された本書は、破産管財人は、支払いの際に源泉徴収し、破産者の名において所轄税務署に納付することになると明記。
ただし、実は、本実例問答は、平成21年度版のものと一言一句同じであり、2011年01月14日付最高裁判決についての言及は一切なし。
2011年01月14日付最高裁判決を受けて課税当局にも確認の上修正する必要なしとしたのか、課税当局に確認していないが考え方に変更はないとしてそのままにしたのか、この可能性はないと思いますが検討自体もしていないのか実はよくわかりません。
個人的には、従来の元従業員や補助者への支払時の実務と同様に、破産者名義で破産者の事務所等を納税地とし源泉所得税を納付するという本書の示す取り扱いは妥当と思いますが。
ちなみに、本書は、破産管財人報酬は仕入税額控除の対象とも明言しており、破産会社の消費税のタックス・プランニングは慎重に行う必要がありますので念のため。
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