東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関する特例措置情報No.16:待っていました災害損失特別勘定!国税庁「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」、「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」の公表(4月21日に一部訂正いたしました)
このたびの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお折りいたします。
当ブログでも微力ではありますが、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関する特例措置情報をアップさせていただきますので、よろしければご参考ください。
今回は、「待っていました災害損失特別勘定!国税庁「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」、「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」の公表」についてです。
4月21日に、内容に一部誤りがございましたので訂正させていただきました。
■「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律案」の国会提出
昨日(4月19日)に、先日ご紹介した政府税制調査会「東日本大震災への税制上の対応(第一弾)(案) 」等に関して、
・「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律案」が
いよいよ国会に提出されました。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/tokurei/index.htm
ただ、先日ご紹介の阪神淡路大震災時に国税庁からの個別通達により認められた「災害損失特別勘定」についてはアナウンスがなく、これも先日ご紹介した、4月8日に通常の取り扱いがまとめられた「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」が公表されたこともあり、「災害損失特別勘定」が東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)では見送られるのではないかとの危惧を抱いておりました。
■「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」、「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」の公表
ところが、本日(4月20日)、ついに、国税庁より、「災害損失特別勘定」に対する正式なアナウンスが公表されました。
・「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/110418/hojin_atsukai.pdf
・「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/pdf/hojin_FAQ.pdf
■上記から感じること
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)により直接被災された企業、特に3月決算企業については、待ちに待った朗報です。
今回の平成23年4月18日付課法2-3ほか2課共同「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/110418/hojin_atsukai.pdf
と、
阪神淡路大震災時の平成7年2月27日付課法2-1ほか2課共同「阪神・淡路大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/950227/01.htm
を取り急ぎ比べてみたところ、概ね同様な内容ですが、1点大きな相違点があるようですので注意が必要と思われます。
それは、阪神淡路大震災時の
「(復旧費用)
8 法人が、被災資産の被害前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、修繕費として経理したときは、法人税基本通達7-8-3から7-8-6まで((資本的支出と修繕費の区分))の取扱いにかかわらず、これを認める。
法人が、被災資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設(被災資産の被災前の効用を維持するためのものを除く。)を設置する場合の当該資産又は特別な施設は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は、これらの資産の取得の代価及び付随費用となるのであるから、これらの資産の取得価額に含めることに留意する。」
という項目が、今回の東日本大震災の個別通達にはないことです。
ということは、修繕費と資本的支出は、従来通り、法人税基本通達7-8-3から7-8-6まで((資本的支出と修繕費の区分))の取扱いのとおり、4月8日に公表された通常の取り扱いがまとめられた「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」のとおりということになりそうです。
「災害損失特別勘定」が認められたのは何よりですが、上記の「危惧」が一部的中したとも言えますが、「被災資産の被害前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用」の修繕費なのか資本的支出になるかの判定には十分な注意が必要なようです。
「取り急ぎ比べてみた」こともあり、上記の抹消線部分は誤りでしたのでお詫びさせていただくとともに、下記のとおり訂正させていただきます。
これは、阪神淡路大震災時の8項については、平成7年税制改正で、法人税基本通達7-8-6に下記の通り修文されて掲載されたことによるものです。
「 法人税基本通達 7-8-6
災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例
災害により被害を受けた固定資産(当該被害に基づき法第33条第2項《資産の評価損の損金算入》の規定による評価損を計上したものを除く。以下7-8-6において「被災資産」という。)について支出した次に掲げる費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、7-8-1から7-8-5までの取扱いにかかわらず、それぞれ次による。
(1)被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は、修繕費に該当する。
(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、法人が、修繕費とする経理をしているときは、これを認める。
(3)被災資産について支出した費用(上記(1)又は(2)に該当する費用を除く。)の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、法人が、その金額の30%相当額を修繕費とし残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。
(注)1 法人が、被災資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設(被災資産の被災前の効用を維持するためのものを除く。)を設置する場合の当該資産又は特別の施設は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は、これらの資産の取得価額に含めることに留意する。
2 上記の固定資産に係る災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例は、令第114条《固定資産に準ずる繰延資産》に規定する繰延資産に係る他の者の有する固定資産につき、災害により損壊等の被害があった場合について準用する。」
ということは、今回の国税庁「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」の公表により、法人税については、阪神淡路大震災と同等以上の特例が整備されたと言って良いかと思われます。
なお、災害の場合の資本的支出と修繕費の区分については、上記の取り扱いを理解の上、やはり慎重な判断が必要なことは言うまでもありません。
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