東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関する特例措置情報No.3:国税の納税の猶予、地方税の徴収の猶予
このたびの東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお折りいたします。
当ブログでも微力ではありますが、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関する特例措置情報をアップさせていただきますので、よろしければご参考ください。
今回は、国税の納税の猶予、地方税の徴収の猶予についてです。
■国税の納税の猶予
納期限は、納税者に期限の利益を与えるとともに、
1.強制徴収手続開始の起点
2.延滞税の計算期間の起算日
3.徴収権の時効の起算日
になるという重要な意義を持ちます。
そこで、特殊な場合においては、納税を緩和する必要があり、納税の猶予の制度が設けられております。
【災害により相当な損失を受けた場合の納税の猶予】
災害により、納税者が全積極財産のおおむね20%以上の損失を受けた場合は、納税者の申請に基づき、税務署長等は、被害にあった財産の損失の状況及び当該財産の種類を勘案して、納期限から1 年以内の期間を定めて納税を猶予することができ、強制徴収手続の制限、延滞税の免除等のメリットが得られます。
この納税の猶予の対象となる国税は、以下のようなもので、損失を受けた日以後1年以内に納付すべきものです。
1.災害がやんだ日以前に課税期間の満了した所得税または法人税や災害がやんだ日以前に取得した財産に係る相続税または贈与税で、納期限がその損失を受けた日以後に到来するもののうち、猶予申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
2.災害がやんだ日の属する月の末日以前に支払われた給与等の源泉所得税等で法定納期限がまだ到来していないもの
3.災害がやんだ日以前に課税期間が経過した消費税で、納期限が損失を受けた日以後に到来するもののうち、猶予申請の日以前に納付すべき税額の確定したもの
4.予定納税に係る所得税並びに中間申告に係る法人税及び消費税
この納税の猶予を受けるためには、災害のやんだ日から2 か月以内に、納税の猶予申請書、被災明細書を提出する必要があります。
【通常の納税の猶予】
災害、事業の休廃止又は確定手続の遅延等の理由に基づき、その国税を一時に納付できないと認められるときは、納税者の申請により、猶予を始める日から起算して1年以内等の期間を定め、納税の猶予をすることができすることができ、強制徴収手続の制限、延滞税の免除等のメリットが得られます。
この納税の猶予の対象となる国税は、、災害等により被害を受けたことに基づき、一時に納付することができないと認められる国税です。
なお、納税の猶予期間は、原則として1年以内の期間に限られますが、猶予の期間内に納付ができないやむを得ない理由がある場合は、既に認められている猶予期間と合わせて2年を超えない期間内で、申請により納税の猶予期間の延長を受けることができます。
この納税の猶予を受けるためには、納税の猶予申請書の提出が必要で、原則として猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供が必要です。
【2つの納税の猶予の関係】
前者の「災害により相当な損失を受けた場合の納税の猶予」は、個々の納税者の納付能力を個別的に調査することがなく、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供も不要である点で、後者の「通常の納税の猶予」と相違します。
また、前者の「災害により相当な損失を受けた場合の納税の猶予」、後者の「通常の納税の猶予」及びその延長により、最長3年間の猶予を受けることができます。
■地方税の徴収の猶予
地方税法第15条によると、以下のような場合において、その地方団体の徴収金を一時に納付等ができないと認めるときは、その者の申請に基き、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができるとされ、強制徴収手続の制限、延滞金の免除等のメリットが得られます。
1.納税者又は特別徴収義務者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたとき。
2.納税者若しくは特別徴収義務者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。
なお、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に関する地方税の徴収の猶予がアップされている各課税庁のサイトをリンクいたしますのでご参考ください。
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