企業価値評価の新バイブル誕生と言ってもよいでしょう。裁判事例分析が加わり実務指針としてふさわしくなった「企業価値評価ガイドライン」。日本公認会計士協会 (編集) 「企業価値評価ガイドライン」
現在、公表されている企業価値の評価の指針は、日本公認会計士協会経営研究調査会が平成19年5月16日に公表した経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/32.html
ところが、従前の非上場会社株式の価格評価の指針、日本公認会計士協会経営研究調査会から平成5年11月9日に公表された「株式等鑑定評価マニュアル」、平成7年8月に公表された「株式等鑑定評価マニュアルQ&A」と比べると基本事例等が省略され、我々実務家にとっては使い勝手が悪くなった印象は否めませんでした。
その後、中小企業庁が平成21年2月に公表した「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」で、具体例、裁判例、具体的数値の例示がありましたが、日本公認会計士協会も、平成22年8月9日に、経営研究調査会研究報告第41号「事例に見る企業価値評価上の論点-紛争の予防及び解決の見地から-」という裁判事例分析を公表。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/41_5.html
日本公認会計士協会 (編集) 「企業価値評価ガイドライン」(2010年11月25日)は、経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」と営研究調査会研究報告第41号「事例に見る企業価値評価上の論点-紛争の予防及び解決の見地から-」を一冊にまとめたもので、企業価値評価の新バイブル誕生と言ってもよいでしょう。
■インカム・アプローチをめぐる紛争事例・・・カネボウ事例
本書で特に参考となるのは、インカム・アプローチをめぐる紛争事例として紹介されているカネボウ事例。
事業計画に関する争点、「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」でも紹介されていた市場リスクプレミアム、スモールビジネス・リスク・プレミアム、非流動性ディスカウント等の資本コストに関する争点、負債コスト、最適資本構成等の加重平均資本コストに関する争点、ターミナル・バリュー(終価)、遊休・非事業用資産等のその他の争点を分析。
カネボウ事例が、DCF法を利用の際の今後の判断基準になるかもしれません。
■実は無料で全部ダウンロードできますが・・・
本書は、上述したように
・経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/32.html
・経営研究調査会研究報告第41号「事例に見る企業価値評価上の論点-紛争の予防及び解決の見地から-」
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/41_5.html
を合わせて単行本にしただけであり、実は無料で全部ダウンロードできます。
しかし、単行本はハンドリングの良さがあり、企業価値評価に携わる専門家なら絶対買って損はない、新バイブルです。
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