「国税に勝った男」による清算所得課税から通常所得課税への移行についての気骨あふれる提言。右山昌一郎(著)「会社の清算実務についての問題点」
右山昌一郎税理士の提言を簡単に要約すると下記の通り。
■清算所得課税から通常所得課税への移行の理由
従前、清算事業年度に入ってもなかなか清算結了しないで事実上営業を継続し、残余財産の分配も行わず清算所得課税の実効を遅延させたり、過大な役員退職金を支給したり、多額の交際費を支出したりする事例に対し、清算所得課税の方法では計算の否認が困難であるという課税上の弊害が発生していたため、通常所得課税への移行が行われた。
■改正後の清算所得に対する課税方式
益金の額-損金の額-期限切れ欠損金=改正後清算所得の金額
■改正後の清算所得に対する課税方式の問題点
1.会社法の残余財産が不変なのに、それを借用している法人税の残余財産の概念が変わるのはおかしいこと。
2.拠出資本を控除しない課税は、会社法の分配可能額に抵触し、会社法に反する課税と考えられること。
3.拠出資本は、他で課税済所得の集合体であり、特に利益積立金額は、法人税課税後の留保金額であり当該範囲内で再び法人税課税が生じることは二重課税であり、資本金等の額の範囲での課税は二重負担と解されること。
■税制改正の提言
益金の額-損金の額-期限切れ欠損金-(資本金等の額+利益積立金額)=新清算所得の金額
という課税方式に早急に改正を行うべきである。
■上記から感じること
「国税に勝った男」だけに、本質をとらえた提言は見事です。
我々税務会計専門家は、どうしても目の前の個別具体的な事実認定とそれに対する税法の適用に目を奪われがちですが、右山昌一郎税理士の本質を見据えた「目」、ぜひともも見習わさせていただきたいと思います。
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