実は日本航空を支援するための一文?平成23年度税制改正大綱の欠損金の繰越控除制度の見直しの例外。
先日(平成22年12月16日)、政府税制調査会が「平成23年度税制改正大綱」を公表。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/news/2010/__icsFiles/afieldfile/2010/12/25/221216taikou.pdf
先日も当ブログで指摘させていただいたように、今回の税制改正の私の注目点は、法人税の実効税率の5%引き下げする見返りの財源措置として制定された、大企業に対する繰越欠損金の利用制限。
その例外の一つが、「平成23 年4月1日前に更生手続開始の決定、再生手続開始の決定を受けたこと等の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)については、その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度については、経過措置として、現行の控除限度額を存置します。」との一文。
エヌピー通信社が発行する「納税通信 2011年1月3日号」によると、国土交通省関係者が打ち明けたところでは、「実は日本航空を支援するための一文だ」とのことです。
■日本航空
同記事によると、平成22年1月に会社更生手続の開始決定を受けており、現行の繰越控除を前提に更生計画を立てており、制度が見直されれば更生計画の練り直しを迫られ、民主党に近い稲盛和夫会長が政府に働きかけ、例外条項をねじ込んだのではないかとのこと。
■上記から感じること
事前に、法人税の実効税率の5%引き下げする見返りの財源措置としての、大企業に対する繰越欠損金の利用制限が報道されていたこともあり、日本航空が政府に働きかけるのは当然のことではないかと思われます。
ただし、他にも「平成23 年4月1日前に更生手続開始の決定、再生手続開始の決定を受けたこと等の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)」に該当する法人は数多くあります。
やはり、前回指摘させていただいた通り、事業再生研究機構等が、事前に政府税制調査会と十分に協議し、倒産税制に与える悪影響を極力排除していただいたというのが主たる理由ではないかと思われます。
「実は日本航空を支援するための一文」という裏話は面白いのではありますが。
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