今年は素早い対応です。事業再生研究機構 税務問題委員会「平成23 年度税制改正による欠損金の利用制限が倒産税制に与える影響について」
先日(平成22年12月16日)、政府税制調査会が「平成23年度税制改正大綱」を公表。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/news/2010/__icsFiles/afieldfile/2010/12/25/221216taikou.pdf
今回の税制改正の私の注目点は、法人税の実効税率の5%引き下げする見返りの財源措置として制定された、大企業に対する繰越欠損金の利用制限。
昨年の税制改正の清算所得課税の通常の所得課税へ移行に関して、聞くところによると「寝耳に水」状態だったらしい、事業再生研究機構が今年は素早く対応。
事業再生研究機構 税務問題委員会名で、即日、文書(速報)「平成23年度税制改正による欠損金の利用制限が倒産税制に与える影響について」を公表しました。
http://www.shojihomu.co.jp/jabr/jabr.html
http://www.shojihomu.co.jp/jabr/iinkai/zeimu/h23-zeiseikaisei.pdf
■平成23 年度税制改正大綱
③ 欠損金の繰越控除制度等について、次のとおり見直しを行います。
イ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度及び青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の100 分の80 相当額とし、連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする連結事業年度のその繰越控除前の連結所得の金額の100 分の80 相当額とします。これに伴い、次の措置を講じます。
(イ) 中小法人等については、現行の控除限度額を存置します。
(注)中小法人等とは、次の法人をいいます。① 普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の 額が1億円以下であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの(相互会社等、相互会社等の100%子法人及び資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人を除きます。) ② 公益法人等 ③ 協同組合等 ④ 人格のない社団等
(ロ) 特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人及び特定投資信託に係る受託法人で、支払配当等の損金算入制度の適用対象となるものについては、現行の控除限度額を存置します。
(ハ) 会社更生等による債務免除等があった場合について現行どおり欠損金の損金算入ができるようにする等の所要の整備を行います。
(注1)上記の改正は、平成23 年4月1日以後に開始する事業年度について適用します。
(注2)平成23 年4月1日前に更生手続開始の決定、再生手続開始の決定を受けたこと等の事実が生じた法人(連結納税の場合には、連結親法人)については、その決定等の日から更生計画認可の決定、再生計画認可の決定等の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度については、経過措置として、現行の控除限度額を存置します。
ロ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間を9年(現行7年)に延長します。これに伴い、次の措置を講じます。
(イ) 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度について、その欠損金が生じた事業年度の帳簿書類の保存を適用要件とします。
(ロ) 法人税の欠損金額に係る更正の期間制限を9年(現行7年)に延長します。
(ハ) 法人税の欠損金額に係る更正の請求期間を9年とします。
(注)上記(イ)及び(ロ)の改正は、平成20 年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額について適用し、上記(ハ)の改正は、平成23 年4月1日以後に法定申告期限が到来する法人税について適用します。
■事業再生研究機構 税務問題委員会「平成23 年度税制改正による欠損金の利用制限が倒産税制に与える影響について」
平成23年度税制改正(大綱)において導入されることが決定した、欠損金の損金算入制限(利用制限)が、青色欠損金の利用制限という本来の予定を超えて、倒産手続の場面で利用が認められている期限切れ欠損金に対しても悪影響が生ずる可能性を懸念したため、文書(速報版)として論点を整理して説明。
青色欠損金の利用制限が除外される類型は、下記の3類型。
①事業年度終了時の資本金が1 億円以下
②平成23 年4 月1 日前に更生手続き開始決定、再生手続き開始決定等を受けた場合
→ 認可決定日以後7 年日属する経過事業年度まで
③会社更生等による債務免除等=法人税法59 条による期限切れ欠損金は、現行通り損
金算入可
したがって、先に期限切れ欠損金を利用し、認可決定後の事業年度に利用使途のない青色欠損金を残すことによって、再生期間中の事業所得に対して青色欠損金を有効利用しようとする場合、認可決定後の事業年度については、温存した青色欠損金の損金算入に制限を受ける場合が発生。
・平成23 年4 月1 日前に更生手続開始決定、再生手続開始決定を受けたこと等の事実が生じた法人の、その決定等の日から更生計画認可決定、再生計画認可決定等(合理的私的整理を含む)の日以後7 年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度
経過措置として、現行の控除限度額を存置。
つまり、平成23 年3 月31 日以前に手続の開始決定を受けた場合には、青色欠損金の控除期間である最大7 年間にわたり、青色欠損金の制限を受けないことに。
・平成24 年4月1日以降の手続開始決定
経過措置の適用無。
青色欠損金を温存し、認可決定後の事業年度に青色欠損金を利用する際には、青色欠損金の利用制限を受けるので、所得金額の20%部分が課税所得に。
■上記からわかること
翌年7月に「平成22年度税制改正後の清算中の法人税申告における実務上の取扱いについて」という提言を公表していただいたものの、昨年の税制改正の清算所得課税の通常の所得課税へ移行に関して、聞くところによると「寝耳に水」状態だったらしい事業再生研究機構 。
今年の即日という素晴らしい対応は、事前に政府税制調査会に十分な根回しが済んでいた結果と思われ、倒産税制に与える悪影響を極力排除していただけたようです。
従来も外形標準課税の適用を回避することも考慮し、減資を更生計画や再生計画に盛り込むというのがタックス・プランニング上重要でしたが、今後は欠損金の損金算入制限(利用制限)を避ける意味でも、事業再生の局面での減資が重要になってきそうです。
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