「自分リマスター」砂原良徳(Yoshinori Sunahara)のリマスターで再認識!日本で音楽が最も売れた時代が生んだ、日本が誇る天才サウンド・クリエイター、コーネリアス (Cornelius)の最高作。「ファンタズマ(FANTASMA)」
コーネリアス (Cornelius)こと小山田圭吾(Keigo Oyamada)のデビューは、今年春にソロとして13年ぶりのコンサートツアーを行った小沢 健二(Kenji Ozawa)とのバンド、フリッパーズ・ギター(The Flipper's Guitar)で1989年。
とにかく小生意気で、旧世代(今考えるとそんなに年は違わないのですが)の私は、その引用と編集の露骨さも含め毛嫌いしていたのも事実。
私が認識を改めたのが、ソロ活動後の、小沢 健二(Kenji Ozawa)「LIFE」(1994年)、コーネリアス (Cornelius)「69/96」(1995年)で、そのオリジナルティーの進化ぶりにびっくり。
ちなみに、フリッパーズ・ギター(The Flipper's Guitar)についても、2006年8月の高山徹(Tohru Takayama)によるリマスター盤、「カメラ・トーク(CAMERA TALK)」(1990年)がまるで別のアルバムかのように素晴らしく、今では私も評価を改めています。
これにより私がリマスター盤にはまるようになったきっかけとも言える程の「別物」感の「カメラ・トーク(CAMERA TALK)」2006年リマスター音源ですが、なぜか本年(2010年)に発売されたSHM-CD盤は、この音源ではなくオリジナル音源が用いられているようですのでくれぐれもご用心を。
オリジナルの「ファンタズマ(FANTASMA)」は、1997年の発売。
「69/96」(1995年)のベック(Beck)を凌駕するそのサウンド・コラージュにすっかり惚れ込んでいた私は、発売と同時に聴きまくりました。
ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)、ベートーヴェン(Beethoven)、ディズニー(Disney)といった、1980年代初期のムーンライダーズ(Moonriders)も真っ青の満載された情報量、それを「思わせぶり」に終わらせないメロディー・リズム・サウンドへのこだわりと完成度の高さ(付録のヘッド・フォンはちゃちで使えず勇み足というところでしたが)。
特に、その後の「ポイント(POINT)(2001年)」、「センシュアス(SENSUOUS)」(2006年)といった独自の音響路線につながって行く、立体的なサウンド・メイキングは衝撃的でした。
・You Tube上の7曲目「スター・フルーツ・サーフ・ライダー(Star fruits surf rider)」のプロモーション・ビデオ。
http://www.youtube.com/watch?v=_s_30x_d5bo&playnext=1&list=PLB0DA7B756095ECBD&index=6
当時流行ったドラムン・ベースを意識した細分化されたリズム・トラック、「シャーン」という衝撃音が何とも気持ちいい。
今回の2010年リマスター盤発売の経緯については、「Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2010年 11月号」の小山田圭吾(Keigo Oyamada)と砂原良徳(Yoshinori Sunahara)の対談に詳しい事情が掲載。
コーネリアス (Cornelius)が現在所属するワーナー・ミュージック・ジャパン(Warner Music Japan)に初期4作の原盤権が譲渡されたことを契機にアーカイブ化を図ることになり、まずは「2010」という曲が含まれいることから、「ファンタズマ(FANTASMA)」が口火を切ることに。
砂原良徳(Yoshinori Sunahara)は、市販のCDを自分好みにリマスターして、ジャケットやオビまでスキャンして製品顔負けの紙ジャケットまで作るという「自分リマスター」という趣味に凝っており(笑)、「ヘッド博士の世界塔(DOCTOR HEAD'S WORLD TOWER)」(1991年7月10日)の「自分リマスター」を渡し小山田圭吾(Keigo Oyamada)が関心したことがそのきっかけとのこと。
音楽の双方向的楽しみ方の未来形ともいえる「自分リマスター」という暗号をちりばめたところも、ただのリマスター盤に終わらせない小山田圭吾(Keigo Oyamada)の真骨頂というところでしょうか。
そして、その砂原良徳(Yoshinori Sunahara)のリマスターがまた気持ち良い。
1曲目「マイク・チェック(MIC CHECK)」のスネア音だけでも昇天しそうです。
その他、2010年リマスター盤を聴いていて私が思ったのは以下の2点。
まず、第1に、オリジナルティという意味では、2000年代の「ポイント(POINT)(2001年)」、「センシュアス(SENSUOUS)」(2006年)が確かに上なのですが繰り返し聴くと飽きるのに対し、20世紀型ポップスのフォーマットが色濃く残る「ファンタズマ(FANTASMA)」(1997年)は何回聴いても飽きず、現時点でのコーネリアス (Cornelius)の最高作ではないかということ。
第2に上記対談でも触れられていますが、1997年~1998年は日本で最もCDが売れた時代で、DISC3のDVDでわかるとおり、コーネリアス (Cornelius)もTVスポットを打ち、日本武道館でコンサートを行っており、良い意味で商業主義、市場経済原理がエンターテイメント性を後押ししているということ。
最近感じるのは、録音機材の発達による録音コストの低減から、かつて理想とされた商業主義、市場経済原理に縛られないレコーディングが可能になりましたが、商業主義、市場経済原理とアーティストの理想主義がせめぎ合う、キャッチーさとマニアックさの幸福な両立というのが失われつつあるということ。
失ってみて初めて分かる20世紀商業主義、市場経済原理ポップ・ミュージックの幸福。
そんなことまで考えさせてくれる、2010年砂原良徳(Yoshinori Sunahara)リマスターの「ファンタズマ(FANTASMA)」、お勧めです。
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コメント
こんにちは。TPO1を取り上げてくださってありがとうございます。
TPOまとめブログ管理人です。
TPO1の記事にはもうコメントが付けられないので、こちらに書きますね。
この11月に、TPOのサウンドプロデューサーの本間柑治(片柳譲陽)さんが新しいユニットをはじめました。
DS i Love Youと言います。
http://dsiloveyou.com/
全てKORG DS-10一台で作り上げた実験テクノです。
本日、セカンドのクリスマスカバーアルバムが発売になります。上記公式サイトから試聴できるので、ぜひ聴いてみて下さいネ。
(坂本龍一さんからもコメントを頂いております)
TPOまとめブログでは、TPO関連の話題をたんまり揃えて皆様をお待ちしております。
http://tpo2009.blog56.fc2.com/
またDS i Love Youについては、「TPOまとめサイト」にある写真をブログにご利用頂けますので、よろしければお使い下さい。
今後ともTPO周辺の情報を発信していきますので、どうぞよろしくお願いします。
投稿: TPOまとめブログ管理人 | 2010年11月24日 (水) 17時29分
TPOまとめブログ管理人さん、ご連絡ありがとうございます。
試聴させていただきましたが、「機材を積む次代の終焉」、DS i Love You、面白いですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: Accounting&Music | | 2010年11月30日 (火) 23時58分