正直言ってここまでやるとは驚きました。「人力ループ」ピアノと絶妙な哀愁味のメロディーが織りなす、高いプロフェッショナリズムに支えられた傑作アルバム。チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)「アイボリー・タワー(IVORY TOWER)」
当ブログでも絶賛させていただいた1曲目「ワーキング・トゥギャザー(Working Together)」のウルトラ・ポップぶりが印象的だった、ゴンザレス(Gonzales)「ソフト・パワー(SOFT POWER)」(2008年)。
本当に日本盤は、「ゴンゾー」の日本語表記のアーティスト名で発売してしまったのには驚きましたが、今度は、チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)名でのアルバム、「アイボリー・タワー(IVORY TOWER)」(2010年9月)が発売。
正直言ってここまでやるとは驚きましたが、「人力ループ」ピアノと絶妙な哀愁味のメロディーが織りなす、高いプロフェッショナリズムに支えられた傑作アルバムです。
「ソフト・パワー(SOFT POWER)」もそうでしたが、「アイボリー・タワー(IVORY TOWER)」も、井上由紀子の本人へのインタビューに基づいた詳細な日本語解説が素晴らしく、ぜひ日本盤を入手したいところ(ソフト・パワー(SOFT POWER)のゴンゾー・カヴァーは?ではありますが)。
同解説やWikipediaによると、チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)は、本名はジェイソン ・ チャールズ ・ ベック(Jason Charles Beck)で、カナダ生まれのユダヤ人。
無名時代、カナダで「Making a Jew Cry(ユダヤ人泣かせ)」という楽曲で、カナダのヒット・チャートを賑わせたもののレコード会社と衝突し、ユダヤ人迫害の地であるベルリンに移住し、アンダーグランド・シーンで活動を始め、「迫害された歴史すらマーケティング・エッジになり得る」と本人自身がのたまう一筋縄では行かない経歴の持ち主。
「ゴンゾー」はともかく(日本側の提案に喜んで乗ったという気もしますが)、ゴンザレス(Gonzales)、チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)の名義の使い分けもいろいろと考えるところがあってのことらしい。
そのような重層的な暗号をちりばめながら、本人曰く「パンク・ロックが誕生した時に、音楽の何かが失われたように感じた」というほどの、「俺が信じるのは楽器を確実に演奏できるエンターテインメント性だ」と言い切る、高いミュージシャン・シップも持ち合わせる意外な職人魂の持ち主で、それもチリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)の何とも言えない魅力。
冨田ラボ(Tomita lab)と相通ずるものを感じますが、彼もそこまで言っていないもんなぁ。
輸入盤を聞いた時はよく理解できなかったのですが、前作「ソフト・パワー(SOFT POWER)」は、パンク・ニューウェーブが世を席巻する寸前の1978年の音楽の素晴らしさをテーマにしたものらしい。
「アイボリー・タワー(IVORY TOWER)」は、ドイツのエレクトロ・ユニットであるボーイズ・ノイズ(Boys Noize)ことアレックス・リダ(Alexander Ridha)のプロデュースで、チリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)はループを用いず生演奏のピアノをエレクトロ・ミュージックに融合させることに腐心したとのこと。
ポリリズミックで哀愁味のメロディアスなサウンドは何とも気持ちよく、私は、鈴木さえ子の傑作「科学と神秘 (Visinda og Leyndardómur)」(1984年)を思い起こしました。
また、どうもクレジットが見当たらないのですが、ボーイズ・ノイズ(Boys Noize)の仕事なのかチリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)の仕事なのか二人の仕事なのか録音も本当に素晴らしい。
・You tube上の2曲目「I Am Europe」のプロモーション・ビデオ(PV)
http://www.youtube.com/watch?v=4UjjLpLzzX8
・You tube上の7曲目「ネバー・ストップ(NEVER STOP)」が使われたiPad is DeliciousのCM
http://www.youtube.com/watch?v=btfbIVGES1I
先日の来日公演でのエンター・テイナーぶりもすごかったらしいチリー・ゴンザレス(Chilly Gonzales)、驚くべき才能の持ち主です。
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