事業再生研究機構「平成22年度税制改正後の清算中の法人税申告における実務上の取扱いについて」を受けた国税庁の見解が公表。平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等に係る税制関係)(情報)
平成22年税制改正の台風の目と言ってもよいかもしれない清算所得課税の通常所得課税への移行。
先日、当ブログでもご紹介したように、事業再生研究機構税務問題委員会の提言、「平成22年度税制改正後の清算中の法人税申告における実務上の取扱いについて」を受けた国税庁の見解、平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例(グループ法人税制その他の資本に関係する取引等に係る税制関係)(情報)が遂に公表。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/101006/index.htm
事業再生に関わる税務会計の専門家として重要問題、今回、再度、確認させていただきます。
■事業再生研究機構の提言を受けた質疑応答事例
問10 残余財産がないと見込まれることの意義
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/101006/pdf/10.pdf
問11 実在性のない資産の取扱い
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/101006/pdf/11.pdf
■残余財産がないと見込まれることの意義
法人の清算が、次の(1)から(3)に掲げる手続により行われている場合には、それぞれの場合が「残余財産がないと見込まれるとき」に該当し、それぞれに掲げる書面が「残余財産がないと見込まれることを説明する書類」に該当するものとして取り扱ってよいと明言。
(1) 清算型の法的整理手続である破産又は特別清算の手続開始の決定又は開始の命令がなされた場合( 特別清算の開始の命令が「清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情があること」のみを原因としてなされた場合を除きます。)
「破産手続開始決定書の写し」、「特別清算開始決定書の写し」
(2) 再生型の法的整理手続である民事再生又は会社更生の手続開始の決定後、清算手続が行われる場合
民事再生又は会社更生の手続開始の決定後、再生計画又は更生計画の認可決定( 以下「計画認可決定」といいます。)を経て事業譲渡が行われ、清算が開始している場合には、「再生計画又は更生計画に従った清算であることを示す書面」
計画認可決定前に事業譲渡が行われ、清算が開始している場合には、「民事再生又は会社更生の手続開始の決定の写し」
(3) 公的機関が関与又は一定の準則に基づき独立した第三者が関与して策定された事業再生計画に基づいて清算手続が行われる場合(注)
「公的機関又は独立した第三者の調査結果で会社が債務超過であることを示す書面」
(注)1 公的機関又は独立した第三者が関与する私的整理手続において、第二会社方式による事業再生( 再生会社が第二会社に事業を譲渡し、再生会社自体は清算をするスキームをいいます。) が行われる場合には、公的機関又は独立した第三者が関与した上で債務超過であることの検証がなされ、その検証結果に基づいて策定された事業再生計画に従って再生会社の清算が行われます。
2 公的機関又は独立した第三者が関与する私的整理手続としては、例えば、企業再生支援機構、整理回収機構、中小企業再生支援協議会等の公的機関が関与する手続や、私的整理ガイドライン、産業活力再生特別措置法に基づく特定認証紛争解決手続により関与するものが挙げられます。
■実在性のない資産の取扱い
破産、特別清算、民事再生、会社更生といった裁判所が関与する法的整理手続や、公的機関が関与又は一定の準則により独立した第三者が関与する私的整理手続に従って清算が行われる場合について下記のように取り扱ってよい旨を明言。
⑴ 期限切れ欠損金額の損金算入の可否
法人が、当該事業年度末の時点の実態貸借対照表により債務超過の状態にあるときは、「残余財産がないと見込まれる」ことになるが、実在性のない資産は実態貸借対照表上ないものとして評価されることから、その評価の結果、当該実態貸借対照表上、債務超過の状態にあるときには、「残余財産がないと見込まれる」ことになり、期限切れ欠損金額を損金の額に算入することができる。
⑵ 実在性のない資産の取扱い
法人が解散した場合における期限切れ欠損金額の損金算入措置の適用上、実在性のない資産については、過去の帳簿書類等の調査結果に応じて、それぞれ次のとおり取り扱う。
イ 過去の帳簿書類等を調査した結果、実在性のない資産の計上根拠(発生原因)等が明らかである場合
( イ) 実在性のない資産の発生原因が更正期限内の事業年度中に生じたものである場合には、法人税法第129 条第1項《更正に関する特例》の規定により、法人において当該原因に応じた修正の経理を行い、かつ、その修正の経理を行った事業年度の確定申告書を提出した後、税務当局による更正手続を経て、当該発生原因の生じた事業年度の欠損金額( その事業年度が青色申告の場合は青色欠損金額、青色申告でない場合には期限切れ欠損金額) とする。
(ロ) 実在性のない資産の発生原因が更正期限を過ぎた事業年度中に生じたものである場合には、税務当局による更正手続はないものの、実在性のない資産は当該発生原因の生じた事業年度に計上したものであることから、法人において当該原因に応じた修正の経理を行い、その修正の経理を行った事業年度の確定申告書上で、仮に更正期限内であればその修正の経理により当該発生原因の生じた事業年度の損失が増加したであろう金額をその事業年度から繰り越された欠損金額として処理する( 期首利益積立金額から減算する) ことにより、当該発生原因の生じた事業年度の欠損金額(その事業年度が青色申告であるかどうかにかかわらず期限切れ欠損金額) とする。
ロ 過去の帳簿書類等を調査した結果、実在性のない資産の計上根拠(発生原因)等が不明である場合
裁判所が関与する破産等の法的整理手続、又は、公的機関が関与若しくは一定の準則に基づき独立した第三者が関与する私的整理手続を経て、資産につき実在性のないことが確認された場合には、実在性のないことの客観性が担保されていると考えられる。このように客観性が担保されている場合に限っては、その実在性のない資産がいつの事業年度でどのような原因により発生したものか特定できないとしても、その帳簿価額に相当する金額分だけ過大となっている利益積立金額を適正な金額に修正することが適当と考えられる。
したがって、このような場合にあっては、法人において修正の経理を行い、その修正の経理を行った事業年度の確定申告書上で、その実在性のない資産の帳簿価額に相当する金額を過去の事業年度から繰り越されたものとして処理する( 期首利益積立金額から減算する) ことにより、期限切れ欠損金額とする。
■清算型だけでなく旧会社によるいわゆる「自主再建型」についても解説で言及
解説2で、次のように言及。
なお、お尋ねの内容は、一定の法的整理手続又は私的整理手続に従って清算が行われる場合における実在性のない資産の取扱いですが、民事再生や会社更生の手続に従って会社が存続して再生をする場合や、公的機関が関与又は一定の準則に基づき独立した第三者が関与して策定された事業再生計画に従って会社が存続して再生する場合においても、お尋ねの内容と同様に実在性のないことの客観性が担保されていると認められるときには、これと同様の取扱いとすることが適当と考えられます。
■上記から感じること
一番の懸念事項、実在性のない資産の取扱いについて、国税庁の公式見解が示されのは何より。
しかし、油断のできない清算所得課税の通常所得課税への移行、当ブログでも今後もフォローさせていただきたいと思います。
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