欠損金の繰戻し還付目的の「技あり」の民事再生法の活用?株式会社プロパストが民事再生法の手続申立。
ジャスダック上場のマンション開発会社、株式会社プロパストが2010年5月14日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請。
2010年5月31日付日本経済新聞夕刊の記事、「(ニュースの理由)破綻後も「上場維持」めざす 債権者に有利な場合も 」にもよると、欠損金の繰戻し還付目的の民事再生法の活用のようです。
■欠損金の繰戻し還付
青色申告をしている会社が、税務上の欠損金を出した場合、翌期以降に繰り越して翌期以降7年間の所得から繰越控除することができ、これを欠損金の繰越控除といいます。
青色申告をしている会社が、税務上の欠損金を出した場合に、翌期以降に繰り越さないで、前年度の所得と通算して、前年度の法人税を返してもらうことを、欠損金の繰戻し還付といいます。
ただし、法人税のみに認められており、住民税及び事業税には認められていません。
欠損金の繰り戻し還付は、原則として、平成24年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金については、適用が停止されています。
■例外として欠損金の繰戻し還付の適用が可能な場合
・資本金が1億円以下等の一定の条件を満たす中小企業者等
平成21年2月1日から平成24年3月31日までに終了する各事業年度各事業年度において生じた欠損金額については、適用停止措置の例外として欠損金の繰り戻し還付の適用が可能です。
・解散(適格合併による解散を除きますが、破産手続開始決定による解散は含まれます)、事業の全部譲渡、会社更生法・民事再生手続開始等の事実があった内国法人の当該事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度
資本金が1億円以下等の一定の条件を満たす中小企業者等でなくとも、適用停止措置の例外として欠損金の繰戻し還付の適用が可能です。
■民事再生法での欠損金の繰戻し還付
民事再生手続が開始決定となると、開始決定日で事業年度は終了せず、法人税法のみなし事業年度の適用もなく、青色申告をしている会社であれば、開始決定日の属する通常の事業年度において生じた欠損金で前事業年度の法人税を取り戻せるだけでなく、前事業年度の欠損金で前々事業年度の法人税等を取り戻せる場合があるということになります。
詳細は不明ではありますが、株式会社プロパストは、約53億5千万円の法人税の繰戻し還付を見込んでいるらしく、同社の損益状況、2010年5月14日という申立時期から推定すると、2009年5月期の欠損金で、2008年5月期の法人税を還付しようとしているのではないかと思われます。
そうであるとするならば、民事再生法に関する税制を活用した、我々事業再生の関わる税務会計専門家から見ると「技あり」のスキームということができます。
■もうひとつの「技あり」の上場維持
民事再生法等の法的整理を行うと、原則、上場廃止となります。
ところが、株式会社プロパストは、
(1)100%減資はしない
(2)一定額以上の1カ月平均時価総額を維持する
(3)「再生計画」を裁判所が認可する見込みがある
などの条件を満たすことにより例外的に上場維持する道を選択。
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