平成22年(2010年)税制改正でこうなるNo.2。グループ内取引等に係る税制(グループ法人税制)の創設
民主党政権下で初めての平成22年度税制改正法案が、3月24日の衆議院本会議において可決・成立し、改正法に係る政省令も3月31日付で公布され4月1日から施行。
前回に引き続き、平成22年(2010年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成22年(2010年)改正でこうなる」シリーズの第2回。
今回は、改正の目玉中の目玉といっても良い、グループ内取引等に係る税制(グループ法人税制)の創設についてです。
■従来の制度
企業経営においては、グループ経営が一般化していますが、法人税法上は、法人を単位に税額計算を行うのが原則です。
ただし、親会社とすべての100%子会社に関しては、グループ全体を単位に税額計算を行うという、平成14年に創設された連結納税制度が事前申請と承認を条件に選択適用ができました。
■グループ内取引等に係る税制(グループ法人税制)の創設
企業グループに関する税制について、課税の中立性や公平性等を確保する観点からグループ内取引等に係る税制(グループ法人税制)が創設されました。
重要な部分についてのみ、簡単に触れると以下の通りです。
【100%グループ法人とは】
・一の者が原則として発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係(当事者間の完全支配の関係)にある
又は
一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある
法人相互の関係である完全支配関係にある法人をいいます。
・上記の判定において、同族関係者は同一の者とみなされます。
【100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等】
・100%グループ内の内国法人間で
一定の資産の
移転(含非適格合併による移転)を行ったことにより生ずる譲渡損益を
その資産のそのグループ外への移転等の時に
その移転を行った法人において計上する制度となりました。
・一定の資産とは概ね以下の通りです。
売買目的有価証券、簿価1,000万円未満の資産、棚卸資産は除かれます。
固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産は対象となります。
・内国法人間の取引が対象ですので、
個人と法人間
外国法人と内国法人間の取引
については適用されません。
【100%グループ内の法人間の寄附】
・100%グループ内の法人間の寄附金について
支出法人において全額損金不算入、
受領法人において全額益金不算入
とされました。
【受取配当の益金不算入についての負債利子控除不適用】
・100%グループ内の内国法人からの受取配当について
益金不算入制度を適用する場合には、
負債利子控除を適用しないこととされました。
■適用時期
・100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等、100%グループ内の法人間の寄附
平成22年(2010年)10月1日から適用されます。
・受取配当の益金不算入についての負債利子控除不適用
平成22年(2010年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
■上記から感じること
選択適用である連結納税制度と異なり、グループ内取引等に係る税制(グループ法人税制)は強制適用であること
100%親子会社のみ適用の連結納税制度と異なり、個人株主を同一の者(同族関係者は同一の者とみなされる)とするいわゆる兄弟会社(姉妹会社)にも適用されること
から、
大企業だけではなく
中堅・中小企業にとっても
影響の大きい重要な改正といえます。
従来にない新しい考え方の税制のため、我々税務会計専門家としても、早急に全容を解明し、平成22年(2010年)9月30日までにとるべき対策をとる必要があり、大変緊張いたします。
| 固定リンク
« これは大変な損失です。オウズリー(Owsley)ことウィル・オウズリー(Will Owsley)、享年44歳、究極を求めるメロディ・メイカーのあまりにも早すぎる死。「カミング・アップ・ローセズ(Owsley)」 | トップページ | あまりにも寡作な究極を求めるメロディ・メイカーにしてサウンド・クリエイター、オウズリー(Owsley)をこれまたあまり知られているとはいえない外仕事で偲ぶNO.1。「A Tribute to the Cars: Substitution Mass Confusion」 »
「会社・個人の税金・会計」カテゴリの記事
- 紙幅は狭いながら濃い内容です。「〔特集〕2018よい節税悪い節税」週刊エコノミスト 2018年01月30日号(2018.02.11)
- 元旦日本経済新聞1面。「パンゲアの扉 つながる世界 溶けゆく境界 もう戻れない デジタルの翼、個を放つ 混迷の先描けるか」(2018.01.01)
- 遂にグローバルタックスプランニングにも言及。「大増税&マイナンバー時代の節税術」 (週刊ダイヤモンド 2017年 12/23 号)。(2017.12.24)
- 一番使いやすい。島田 哲宏(著)「Q&Aで解決 欠損金の繰越控除の判断とポイント」(2017.02.11)
- 特に、資産課税関係に注目です。自由民主党、「平成29年税制改正大綱」を公表。(2016.12.11)
コメント