平成22年税制改正で最も気になります。清算所得課税の通常所得課税への移行に伴う解散法人で仮装経理が行われていた場合の期限切れ欠損金の取扱
会計事務所にとって地獄のような確定申告がようやく過ぎ去り、すっかりご無沙汰してしまったブログを再開。
まずは、当ブログでも注目の、平成22年税制改正による清算所得課税の廃止、通常所得課税への移行。
「週間税務通信No.3106平成22年03月22日」によると、解散法人で仮装経理が行われていた場合、一定の要件の下で青色欠損金の利用が可能となる場合はある一方、期限切れ欠損金に係る扱いは未定となっており、今後は取扱いなどの上で明確化を図るのではないかと見込まれるとのことです。
■解散法人で仮装経理が行われていた場合
仮装経理すなわちいわゆる粉飾決算をしていた法人では、赤字であるにも関わらず黒字を仮装し、法人税の申告を行うため、清算事務年度において、青色繰越欠損金も期限切れ欠損金も生じていない、生じていても実態と比べ不十分な場合がありえます。
そのような場合、清算事務年度において、債務免除等を受けたとしても、債務免除益等と相殺させるべき欠損金が不十分なため、債務免除益等が課税される可能性も起きえます。
■青色繰越欠損金
「週間税務通信No.3106平成22年03月22日」によると、法人税法第129条第1項(案)で規定する所定の手続きに則り、2期前につき修正経理を行い、これに基づく当期申告をした上で更正の嘆願を行った結果、税務署長の職権により2期前の所得が更正され、青色繰越欠損金が生じれば、債務免除益と相殺が可能とのこと。
■期限切れ欠損金
ところが、仮装経理していた法人が解散した場合の期限切れ欠損金の扱いについては、現在は未定となっているとのこと。
上記のように、法人税法第129条第1項(案)で規定する所定の手続きに則り更正を受けたとしても、現行制度では更正の期間制限は最大7年であるため、そもそも7年を越えた更正はできないという問題が生じるとのこと。
■上記から感じること
そもそも、仮装経理が行われていた場合の更正の嘆願は、我々事業再生に関する税務会計専門家にとって最も難易度の高い仕事で、証拠資料が散逸している場合などもう大変。
解決方法としては、7年前の期首利益積立金を更正していただく方法も考えられますが、それを立証するのも至難の業。
といっても、この問題が解決できないと仮装経理していた法人は、破産すればよいのかもしれませんが、場合によっては清算ができずに放置されることになりかねず、今後の課税当局からのアナウンスには注目です。
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