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民事再生法でも「開始決定時評価換え(損金経理方式)」が従来通り適用可能であるものの、金銭債権が評価損の対象となるのは「認可決定時評価換え(別表添付方式)」の場合のみであること等が明確に。国税庁が法人税基本通達等の一部改正を公表。

 国税庁が、2009年1月8日、平成21年12月28日付「法人税基本通達等の一部改正について」課法2-5,課審5-41)を公表。

 当ブログでも逐次ご紹介していた、企業再生税制等に関する平成21年税制改正の解釈上の、

・民事再生法の場合でもいわゆる「開始決定時評価換え(損金経理方式)」が可能か

・可能な場合でも金銭債権が評価損の対象となるのか

という問題点についての解釈が法人税基本通達により明確化されました。

 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/kaisei/091228/index.htm

 主として、国税庁が同時に公表した「法人税基本通達等の主要改正項目について」という解説に基づいてまとめると以下の通りです。

■資産の評価損

 平成21年度の税制改正により、評価損が計上できる場面が次の3つに整理されました。

(1) 物損等の事実又は法的整理の事実が生じた場合( 法33② )

(2) 会社更生法等の規定による更生計画認可の決定があった場合( 法33③ )

(3) 民事再生法の規定による再生計画認可の決定その他これに準ずる事実が生じた場合( 法33④)

 また、棚卸資産や固定資産などの一般的な資産については、(1)から(3)のいずれの場合においても評価損の対象になりますが、金銭債権については、(2)及び(3)の場合にのみ評価損の対象になると整理されました。

■資産について評価損の計上ができる「法的整理の事実」の例示(基通9-1-3の3 新設)

上記(1)の「法的整理の事実」には、例えば、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより、同法の評定が行われることが該当することを明らかにしています。

(資産について評価損の計上ができる「法的整理の事実」の例示)
9-1-3の3   令第68条第1項《資産の評価損の計上ができる事実》に規定する「法的整理の事実」には、例えば,民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより、同法第124条第1項《財産の価額の評定等》の評定が行われることが該当する。

■評価換えの対象となる資産の範囲(基通9-1-3の2 新設)

 法人の有する金銭債権は、上記(1)の物損等の事実又は法的整理の事実が生じた場合における評価換えの対象とならないことを留意的に明らかにしています。

 また、法的整理の事実が生じた場合には、棚卸資産や固定資産などの一般的な資産のほか、金銭債権についてもその帳簿価額が損金経理により減額されるのが一般的ですが、その減額された金額は評価損として損金算入されるものではなく、貸倒引当金勘定への繰入額として取り扱うことを明らかにしています。

(評価換えの対象となる資産の範囲)
9-1-3の2  法人の有する金銭債権は、法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の評価換えの対象とならないことに留意する。
(注)   令第68条第1項《資産の評価損の計上ができる事実》に規定する「法的整理の事実」が生じた場合において、法人の有する金銭債権の帳簿価額を損金経理により減額したときは、その減額した金額に相当する金額については、法第52条《貸倒引当金》の貸倒引当金勘定に繰り入れた金額として取り扱う。

■評価損益の対象除外資産の少額資産の判定における有利子負債の額の基準時点

 平成21年度の税制改正により、評価損益の対象除外資産の少額資産について、有利子負債が10億円未満の場合は、金額基準の額が1,000万円から100万円に引き下げられましたが( 法令24条の2④五、 68条の2③ )、有利子負債の額は、再生計画認可の決定等の事実が生じた時の直前の額とされました(法基通4-1-9注書き)。

(再生計画認可の決定等の事実が生じた場合の資本金等の額 及び借入金等の額 )
4-1-9  ……………………………
…………………法第25条第3項に規定する再生計画認可の決定があったことその他これに準ずる事実 (以下4-1-9において「再生計画認可の決定等の事実」という。) …………………
(注)   令第24条の2第4項第5号の「借入金その他の債務で利子の支払の基因となるものの額」(以下4-1-9において「借入金等の額」という。)は、再生計画認可の決定等の事実が生じた時の直前における借入金等の額となることに留意する。

■上記から感じること

 平成21年税制改正前の制度では、売上債権や営業差入保証金が多額な卸売業、建物等の賃貸借に関する敷金・差入保証金が多額な小売業や飲食業の事業再生案件においては、債権の資産の評価損の損金性がネックとなり債務免除益課税の問題から、既存会社による自主再建又は減増資によるスポンサー支援スキームがとれず、やむなく事業譲渡スキームを取らざるを得ないようなケースがよく見受けられました。

 以前にご紹介したように、民事再生法、会社更生法等での法人税法上計上可能な資産の評価損の対象に、債権が加わるというのは、事業再生に携わる税務会計専門家として、「悲願達成」といっても良いかもしれないビック・ニュースでした。

 その後、税務専門誌等で、民事再生手続開始決定時に損金経理方式を選択した場合は、会計上損金経理の対象とならない債権は、損金経理要件を満たさないため、従来どおり資産の評価損の対象とならないと解するとの見解が公表されており、個人的には「本当にそう読むの?」と疑問を感じておりました。

 さすがに、今回の公表された「法人税基本通達等の主要改正項目について」では、「金銭債権についてもその帳簿価額が損金経理により減額されるのが一般的ですが、その減額された金額は評価損として損金算入されるものではなく、貸倒引当金勘定への繰入額として取り扱う」という、とりあえずは納得の行く論理が示されているものの、残念ながら、民事再生手続の場合、金銭債権が評価損の対象となるのは「認可決定時評価換え(別表添付方式)」のみであることが明確化されました。

 私の実務経験ですと、有利子負債が10億円未満の場合で、金額基準の額が1,000万円から100万円に引き下げられていたとしても、「認可決定時評価換え(別表添付方式)」はどうにも使い勝手が悪く、期限切れ欠損金の優先利用等よほどの理由がない限り使いたくないところではありますが。

 いずれにしろ、選択肢は増えてきたものの、ますます複雑化している感も否めない企業再生税制、我々の出番は多そうです。

 

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