中小企業への影響。特殊支配同族会社における業務主宰役員役員給与の損金不算入制度は二転三転の末に廃止。平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)。
先日もご紹介したように、平成21年12月22日、政府は平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)を決定。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/etc/pdf/211222taikou.pdf
今回は、特殊支配同族会社における業務主宰役員役員給与の損金不算入制度の廃止、中小法人に対する軽減税率の引下げの見送り、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限の延長等の租税特別措置の延長・拡充等、中小企業経営への影響についてご紹介。
悪名高かった特殊支配同族会社における業務主宰役員役員給与の損金不算入制度は、二転三転の末に廃止されました。
■特殊支配同族会社における業務主宰役員役員給与の損金不算入制度の廃止
・平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)
第4章 平成22年度税制改正
3.法人課税
(2)特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度
特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度について、廃止します。特殊支配同族会社の役員給与に係る課税のあり方については、いわゆる「二重控除」の問題を踏まえ、給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じます。
(注)本制度は、平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されないこととなります。
・筆者による補足説明
「納税通信」2010年1月4日号によると、民主党マニフェストで「廃止」とされながら政府税制調査会の議論で二転三転し一時は「見送り」でほぼ固まっていたのが、閣議当日になって突然廃止に転換したのは、次期参議院選挙を控え民主党から廃止を求める声が強く、小沢一郎幹事長の「鶴の一声」が効いたとからとのこと。
とにかく、平成22年4月1日以後に終了する事業年度から悪名高いいわゆる「一人会社増税」は廃止となることとなりました。
■中小法人に対する軽減税率の引下げの見送り
・平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)
第3章 各主要課題の改革の方向性
3.法人課税
(3)中小法人に対する軽減税率の引下げ
我が国において地域経済の柱となり、雇用の大半を担っているのは中小企業です。こうした中小企業を支えることは、税制にとっても重要な課題の一つです。このため、租税特別措置の見直しに当たっても、中小企業にはできる限りの配慮を行います。また、公益法人などに対する税率との均衡等も勘案しつつ、厳しい経営環境の中で必死に利益を上げている中小企業を支援するため、中小法人に対する軽減税率を引き下げることが必要です。これについては、課税ベースの見直しによる財源確保などと合わせ、その早急な実施に向けて真摯に検討します。
・筆者による補足説明
民主党マニフェストで18%から11%への引き下げが明示されていましたが、こちらは税収確保が優先となり、見送りとなりました。
■中小企業に関する租税特別措置の延長・拡充等(主なものを抜粋)
・平成22年税制改正大綱(2010年税税制改正大綱)
第4章 平成22年度税制改正
3.法人課税
(3)租税特別措置等
〔国税〕
(延長・拡充等)
①中小企業投資促進税制の適用期限を2年延長します(所得税についても同様とします。)。
②中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限を2年延長します(所得税についても同様とします。)。
③中小企業等基盤強化税制を拡充し、資本金の額等が1億円以下の法人による仮想化ソフトウエア等を含む情報基盤強化設備等の取得に係る措置を追加します(所得税についても同様とします。)。
④試験研究費の増加額に係る税額控除(増加型)又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)を選択適用できる制度の適用期限を2年延長します(所得税についても同様とします。)。
・筆者による補足説明
中小法人に対する軽減税率の引下げが見送りと引き換えに、平成22年3月末に期限が切れる、中小企業投資促進税制、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例、中小企業等基盤強化税制、試験研究費の増加額に係る税額控除(増加型)又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)を選択適用できる制度等が延長あるいは拡充されることになりました。
■上記から感じること
特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度は、他の特殊支配同族会社における業務主宰役員給与がある場合には、損金不算入額が過大とならないような特例計算がありました。
ところが、他の特殊支配同族会社における業務主宰役員給与ではない給与所得がある場合には、そのような特例計算はなく、個人では当該金額全額が給与所得控除を受けられるわけでもないのに、法人では二重控除を排除するといって損金不算入になるのは、明らかに二重課税であり問題がありました(このことはなぜか指摘しているのを見たことがないのですが)。
あまり出来の良い制度とは言えなかった特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度が廃止となったのは、中小企業にとっては喜ばしいことです。
ただし、「特殊支配同族会社の役員給与に係る課税のあり方については、いわゆる「二重控除」の問題を踏まえ、給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じます」とういう付記事項があることから、来年度の税制改正は要注意ということにはなりそうです。
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