清算型の民事再生手続、普通清算、特別清算等の場合に影響が有るかもしれません。平成22年税制改正(2010年税制改正)で清算所得課税が通常の所得課税へ移行か。
最近、ある同業者の方から教えていただきましたが、平成22年税制改正(2010年税制改正)で清算所得課税が通常の所得課税への移行する可能性が高いのではないかとのこと。
本当ならば、清算型の民事再生手続、普通清算、特別清算等の場合に大きな影響がありそうです。
■資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会
財務省や経済産業省は、平成21年5月から6月にかけて、グループ法人の一体的運営に対する課税のあり方、資本に関係する取引等についての課税のあり方を主なテーマとして有識者との意見交換を4回にわたり行いました。
そして、平成21年7月30日、「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点とりまとめ」を公表しました。
http://www.mof.go.jp/singikai/shihon/gijiyosi/pdf/ronten.pdf
■「論点とりまとめ」での清算所得課税
下記のとおり、清算所得課税についても言及がなされました。
(1) 解散前後で課税が異ならないよう、清算所得課税を通常の所得課税に移行することが考えられる。
(2) この場、期限切れ欠損金を利用できることとするなど、バランスのとれた仕組みとする必要があると考えられる。
(3) なお,解散後も通常の所得課税の方式が継続されるとなれば、解散を連結子法人の離脱事由とする必要は基本的にないと考えられる。
(4) すでに解散の手続きに移行しているものの、長期間にわたり存続している法人については、本則による所得課税方式への移行により対応することを含めて検討する必要があると考えられる。
■政府税制調査会での経済産業省による平成22年度税制改正要望事項
どうも「グループ法人税制の整備等」として、「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点とりまとめ」の内容が、要望項目として、政府税制調査会で論議されているようです。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/youbou/pdf/meti/22y_meti_k_04.pdf
■清算所得課税の通常の所得課税への移行
もし、行われるのであれば、期限切れ欠損金を利用できることとすることはまずは必須であり、そうであるならば、会計的側面からは財産法による所得計算である清算所得課税と、会計的側面からは損益法による所得計算である通常の所得課税は、計算プロセスの違いはあるものの、原則としては大きな問題はないようにも思われます。
ところが、実務的には、通常の所得課税における金銭債権の貸倒損失の損金算入要件が社会通念上の取引実務や会計実務と比べ非常に厳しいことから、清算所得課税においては問題となることがなかった貸倒損失の否認等の税務リスクが大きな問題となってきそうです。
債務免除を受けずに債務超過のまま手続終結する破産の場合はあまり問題がないでしょうが、清算型の民事再生手続、普通清算、特別清算等の場合に大きな影響がありそうです。
いよいよ、12月11日(金)に取りまとめられる予定の平成22年税制改正大綱、事業再生に携わる税務会計専門家は目を離せないところです。
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