「アカウンティング&ミュージック 2009年洋楽ベスト5(Accounting&Music 2009 Inport music Best 5)」。「音楽水道時代」、「シルバー・ミュージック」、「枯渇するメロディー」が今年のキーワード。
昨年の「アカウンティング&ミュージック 年間CDベスト・テン 2008年」に引き続き、今年は形式を変え、まずは「アカウンティング&ミュージック 2009年洋楽ベスト5(2009 Inport music Best 5)」を発表させていただきます。
「音楽水道時代」、「シルバー・ミュージック」、「枯渇するメロディー」が今年のキーワード。
石坂敬一・日本レコード協会会長も最近は「歌は世につれ世は歌につれ」という法則性がなくなったと嘆く、「枯渇するメロディー」問題に対する回答ともいうべき作品を中心に選ばせていただきました。
第一位は、ショーン・レノン(Sean Lennon)が2008年9月に立ち上げた新レーベル、Chimera Music(キメラ・ミュージック)の所属アーティストのお披露目コンピレーション・アルバム「Chimera Music Release No.0(キメラ・ミュージック・リリースNo.0」(2009年1月)。
何と言っても、ショーン・レノン(Sean Lennon)と才色兼備のシャーロット・ミュール(Charlotte Muhl)のユニット、THE GOASTT(ザ・ゴースト)が素晴らしく、本当はTHE GOASTT(ザ・ゴースト)名義のフル・アルバムが出ていればそれが1位。
・You tube上のTHE GOASTT(ザ・ゴースト)「世界は人間のために The World Was Made For Men」のライヴ映像。
http://jp.youtube.com/watch?v=GhASbIRUfqw
コンピレーション・アルバムとしては、注目のダーティー・プロジェクターズ(Dirty Projectors)に始まり、2009年ベスト・トラックと言っても良いスフィアン・スティーヴンス (Sufjan Stevens)「ユー・アー・ザ・ブラッド(You Are The Blood)」が素晴らしかった、レッド・ホット・コンピレーション(Red Hot Compilation)シリーズ最新作「ダーク・ワズ・ザ・ナイト(Dark Was The Night)」(2009年2月)もありましたが、浮世離れした音楽と言われようと私は「Chimera Music Release No.0(キメラ・ミュージック・リリースNo.0」の方にアルバムとしては軍配を挙げます。
第2位は、当ブログ一押し、夜の湖を泳ぐような音楽を奏でるジェスカ・フープ(Jesca Hoop)の待望の2ndアルバム、「Hunting My Dress(ハンティング・マイ・ドレス)」(2009年11月)。
本当は、1位にしたかったのですが、傑作1stアルバム 「Kismet(キスメット)」(2007年9月)と比べると、華やかさという点で若干の都落ち感は否めず、今が我慢の時、ここは厳しく2位。
My Spaceで、自身のバック・ヤードとして「early early folk songs, pop radio, chamber music,gospel music,20's to 40's jazz, ol' counrty, ol' blues, slave songs,dance Hall, murder ballads, rock and roll, blue grass」と綴っているように、この何ともエキゾティックな深アメリカ的ソング・ライティングは魅力。
同系列のアーティストの新作、クレア&リーズンズ(Clare & the Reasons)「アロー(Arrow)」(2009年10月)、セイント・ヴィンセント(St. Vincent)「アクター(Actor)」(2009年5月)、The Ditty Bops(ザ・ディティ・バップス)「Songs For Steve(ソングス・フォー・スティーヴ)」(2009年4月)も素晴らしかったですが、残念ながら僅差で選外。
第3位は、パディ・マクアルーン (Paddy McAloon) 率いるというより彼のソロ・プロジェクトと化した、プリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)の新作、「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック(Let's Change the World with Music)」(UK:2009年9月、JP:2009年10月)。
水道の水は価値があるものだが、量が多く価格が安いため誰でも飲むことができるのであり、産業人の使命は、水道の水のように、物資を無限に安い価格で提供する事にあり、それにより、人びとにとり幸福な世の中が実現できるというような考えが、パナソニック株式会社(Panasonic Corporation。旧松下電器産業株式会社)創業者、松下幸之助の「水道哲学」。
インター・ネットの発達、機材の進化による録音コストの著しい低下等がもたらした、過去から現在に至るまでのあらゆる音楽が気軽に楽しめる現在の音楽アーカイヴ時代は、僭越ながら私が命名させていただくと「音楽水道時代」。
しかし、加藤和彦についての残念な知らせに象徴されるように、この「音楽水道時代」にどう対応してよいのか、多くの音楽家自身が困惑しているように思われるのも事実。
そのような中、突如、発売になった、タイトルが「音楽で世界を変えよう(Let's Change the World with Music)」という本作、収録曲も「レット・ゼア・ビー・ミュージック(Let There Be Music)」に「アイ・ラヴ・ミュージック(I Love Music)」、「音楽水道時代」にもたされた「福音」。
もう少しアコースティックなサウンドであれば文句無しの1位。
第4位は、パディ・マクアルーン (Paddy McAloon) と並ぶ最高のメロディ・メイカーにして、最高のポップ・シンガー、グレン・ティルブルック(Glenn Tilbrook)の快心作、グレン・ティルブルック&ザ・フラッファーズ(Glenn Tilbrook&The Fluffers)名義での1stアルバム「Pandemonium Ensues」(2009年2月)。
私の大好きなエッセンス、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)ばりのメロディのスィートさ、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)ばりの変幻自在のコード・ワーク、ロバート・パーマー(Robert Palmer)ばりのパンチ力を持ったソウルフルな歌唱力、ウィルコ・ジョンソン(Wilko Johnson)ばりのしっかりとしたカッティング・ギターが絶妙にバランスした、グレン・ティルブルック(Glenn Tilbrook)、その枯れない才能とポジティヴな音楽活動に心より賛辞を送らさせていただきます。
第5位は、トム・ウェイツ(Tom Waits)の新作ライヴ、「グリッター・アンド・ドゥーム・ライヴ(Glitter and Doom Live)」(2009年12月)。
老いてなお盛んな、カッコ良すぎる「シルバー・ミュージック」の代表として、これまた傑作、ランブリング・ジャック・エリオット(Ramblin' Jack Elliott) 「ア・ストレンジャー・ヒア(A Stranger Here)」(2009年4月)を押しのけるストレンジャー度で、最後の最後でランク・イン。
度肝を抜かれるのが、1曲目「ルシンダ-エイント・ゴーイン・ダウン(Lucinda/Ain't Goin Down)」(2008年7月3日バーミンガム(Birmingham)公演)。
・You Tube上の「ルシンダ-エイント・ゴーイン・ダウン(Lucinda/Ain't Goin Down)」の2008年7月8日ダブリン(Dublin)でのほぼ同じ内容のライヴ映像。
http://www.youtube.com/watch?v=cEK8SaON67E
「アーウ」という第一声に思わずしびれます。
1980年代に、製造現場で発生するようなノイズや金属的なギター音などを用いたロックをインダストリアル・ミュージック(Industrial Music)と言いましたが、これはもはや「ヒューマン・インダストリアル・ミュージック」。
多くのミュージシャンが戸惑いを隠せない「音楽水道時代」、そんな世間に惑わされることなど無く、1949年生まれの60歳にして、いまだに進化し続けるその生命力、活力にはとにかく脱帽。
次回は、「アカウンティング&ミュージック 2009年邦楽ベスト5(Accounting&Music 2009 Japan music Best 5」です。
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