「音楽水道時代」に突如もたらされた「福音」。プリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック(Let's Change the World with Music)」
水道の水は価値があるものだが、量が多く価格が安いため誰でも飲むことができるのであり、産業人の使命は、水道の水のように、物資を無限に安い価格で提供する事にあり、それにより、人びとにとり幸福な世の中が実現できるというような考えが、パナソニック株式会社(Panasonic Corporation。旧松下電器産業株式会社)創業者、松下幸之助の「水道哲学」。
インター・ネットの発達、機材の進化による録音コストの著しい低下等がもたらした、過去から現在に至るまでのあらゆる音楽が気軽に楽しめる現在の音楽アーカイヴ時代は、僭越ながら私が命名させていただくと「音楽水道時代」。
しかし、この「音楽水道時代」にどう対応してよいのか、多くの音楽家自身が困惑しているように思われるのも事実。
そのような中、突如、発売になった、あまりにも寡作な現代最高のソング・ライター、パディ・マクアルーン (Paddy McAloon) 率いるプリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)の新作、「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック(Let's Change the World with Music)」(UK:2009年9月、JP:2009年10月)。
何と言っても、タイトルが「音楽で世界を変えよう(Let's Change the World with Music)」で、収録曲が「レット・ゼア・ビー・ミュージック(Let There Be Music)」に「アイ・ラヴ・ミュージック(I Love Music)」。
「音楽水道時代」にもたされた「福音」です。
重ね重ねご紹介させていただいておりますが、加藤和彦の死はショックでした。
特に、「これまでに自分は数多くの音楽作品を残してきたが、今の世の中には本当に音楽が必要なのだろうか、「死にたい」というより「生きていたくない」、消えたい」というような内容だったとされる残された遺書は、特に衝撃的。
作る方も聴く方も気軽に音楽を楽しめる「音楽水道時代」、マスメディアの力により世の中に大きな影響力を与え、それが大きなビジネスにつながった20世紀型のポップ・ミュージックの時代とともに歩んだ加藤和彦は、かなり困惑していたのでないかと思われます。
そのような中、届いたプリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)の新作、「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック(Let's Change the World with Music)」(UK:2009年9月、JP:2009年10月)。
1984年のデビュー以来、25年間の活動期間中、オリジナル・アルバムは新作を含め8作、4年に1作という寡作ぶり、正に音楽仙人の領域のプリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)=パディ・マクアルーン (Paddy McAloon)。
「レッツ・チェンジ・ザ・ワールド・ウィズ・ミュージック(Let's Change the World with Music)」も、新作ながら、「ヨルダン:ザ・カムバック (Jordan: The Comeback )」(1990年)」の次のアルバムとして「仕掛中」のまま諸事情により未完成になっていたものを、パディ・マクアルーン (Paddy McAloon)が一人で完成させたという変則的なもの。
パディ・マクアルーン (Paddy McAloon)自身が、本盤ライナーで自ら語っているように、ビーチ・ボーイズ(Beach Boys)=ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)の「スマイル(Smile)」の影響が大きな作品です。
最近のアーティスト写真を見ると体型的にも似てきたパディ・マクアルーン (Paddy McAloon)、マスメディアの力を借りた20世紀型のポップ・ミュージックのシステムに無頓着にマイ・ペースで良質な作品を作り上げるところが、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)にそっくり。
加藤和彦ショックがいまださめない私も、「レット・ゼア・ビー・ミュージック(Let There Be Music)」とか、「アイ・ラヴ・ミュージック(I Love Music)」と歌うパディ・マクアルーン (Paddy McAloon)の極上のポップ・ミュージックには癒されます。
ただし、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)と同様、アコースティックな楽器と親和性が高いパディ・マクアルーン (Paddy McAloon)の楽曲、サウンドは「アンドロメダ・ハイツ (Andromeda Heights)」(1997年)、「ガンマン・アンド・アザー・ストーリーズ(The Gunman and Other Stories (2001年)、「スティーヴ・マックイーン レガシーエディション(Steve McQueen Legacy Edition)」(2007年)の方が私は好みです。
ちょっと心配なのは、渡辺亨氏がライナー・ノーツで指摘しているパディ・マクアルーン (Paddy McAloon)の数年前かららしい聴覚障害で、どうも病状が回復しないと純然たる新作は難しいらしいとのこと。
66歳になっても純然たる新作を出してきたブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)並みの持続力・復活力を期待したいですね。
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