着々と整備がなされる事業再生に関する税務の取り扱い。「株式会社企業再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」(平成20年11月6日回答)
地域経済を支える中堅・中小企業の事業再生を支援することなどを目的として、2009年10月に国の認可法人として設立され業務を開始した、株式会社企業再生支援機構。
11月13日には、株式会社日本航空(JAL)が、年明けに株式会社企業再生支援機構の支援を受けるためのつなぎの策として、融資している銀行からの資金回収を止める「一時停止措置」を取ることができ、法的整理に移行した際も優先的に弁済され、金融機関が追加融資しやすくなることから事業再生ADRを申請したことが話題になりました。
「週間税務通信」平成21年11月16日号でも紹介されていますが、そのような中、国税庁から、企業再生支援機構による事業再生の税務上の取り扱いについて、企業再生支援機構への文書回答の形で明らかにした「株式会社企業再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」(平成20年11月6日回答)が公表されました。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/091106/besshi.htm
■株式会社企業再生支援機構による事業再生の税務上の取り扱い
一定の要件の下で企業再生支援機構が取りまとめた事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合には、
債務者について
1.資産の評価損益の算入
2.いわゆる期限切れ欠損金も利用可
債権者について
3.原則として債権放棄等を寄附金課税の対象とせず、その損失を損金算入
債務者の代表者について
4.一定の私財提供を行った場合の譲渡所得の保証債務特例の適用
について整理がなされました。
■上記から感じること
基本的には、同じように文書回答の形で示された、私的整理ガイドライン、整理回収機構(RCC)、中小企業支援協議会、事業再生ADR等の従来の事業再生スキームと同様の整理がなされていると思われます。
債務者の代表者についての一定の私財提供を行った場合の譲渡所得の保証債務特例の適用については、従来の事業再生スキームについての文書解答では触れられていませんでしたが、「保証債務の特例における求償権の行使不能に係る税務上の取扱いについて」(平成14年12月25日文書回答)で示されていた解釈の確認ですので新たな取り扱いが示されたわけではありませんが、租税法定主義の観点からは納税者の予測可能性が増し好ましいことだと思われます。
着々と整備がなされる事業再生に関する税務の取り扱い、我々事業再生に関わる税務会計専門家としても、最大限活用し適切なお手伝いさせていただきたいと思います。
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