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平成21年改正後は、法的整理の事実があった場合の資産の評価損対象資産の制限が原則としてなくなったものの、民事再生法の場合の金銭債権は事実上再生計画の認可時に損金算入。

 先日もご紹介した「週刊税務通信」No.3087平成21年10月26日号によると、21年度税制改正により、条文上、法的整理の事実があった場合、資産の評価損を計上できる対象資産に制限が原則としてなくなりましたが、民事再生法の場合に選択適用可能な、開始決定時評価換え(損金経理方式)と認可決定時評価換え(別表添付方式)の内、金銭債権については、事実上、認可決定時評価換え(別表添付方式)によらなければ損金算入できない旨、注意喚起が行われていますので注意が必要です。

■法人税法33条2項及び3項の平成21年度税制改正

 平成20年12月12日付の自由民主党平成21年度税制改正大綱(2009年度(当時の)与党税制改正大綱)での公表当初は、

「評価損の計上対象となる資産の範囲に債権を追加する。」

とのアナウンスでしたが、法人税法33条2項及び4項は実際には以下のように改正。

 法人税法33条2項の開始決定時評価換え(損金経理方式)については、

「内国法人の有する資産(預金、貯金、貸付金、売掛金その他の債権(次項において「預金等」という。)を除く。)につき、」

という部分が、

「内国法人の有する資産につき、」

というように改正。

 法人税法33条4項の認可決定時評価換え(別表添付方式)については、

「その資産(預金等その他政令で定める資産を除く。)の評価損の額」

という部分が、

「その資産(評価損の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)の評価損の額」

というように改正。

 すなわち、資産の評価損を計上できる対象資産に制限が原則としてなくなりました。

■民事再生法の場合の金銭債権は事実上再生計画の認可時に損金算入

 以前にもご紹介したように、今回の「週刊税務通信」No.3087平成21年10月26日号もそうですが、税務専門誌等の見解によると、損金経理方式を選択した場合は、会計上損金経理の対象とならない債権は、損金経理要件を満たさないため、従来どおり資産の評価損の対象とならないと解するようですので注意が必要なようです。

 「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見」によれば、一般的には、受取手形、売掛金、貸付金等の債権については市場がない場合が多く、客観的な時価を測定することが困難であると考えられるので、原則として時価評価は行わないこととしたとされています。

 「金融商品に係る会計基準」によれば、受取手形、売掛金、貸付金その他の債権の貸借対照表価額は、原則として、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とされます。

 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会)によれば、債権の回収可能性がほとんどないと判断された場合には、貸倒損失額を債権から直接減額して、当該貸倒損失額と当該債権に係る前期貸倒引当金残高のいずれか少ない金額まで貸倒引当金を取り崩し当期貸倒損失額と相殺しなければならないとします。

 そうすると、民事再生法の場合の金銭債権の資産の評価損については、事実上、法人税法33条4項の認可決定時評価換え(別表添付方式)により損金算入せざるを得ない場合が多くなりそうです。

■上記から感じること

 売掛金、貸付金等の債権について会計上損金経理が困難な含み損がある場合は、別表添付方式による評価損計上を検討することになりますが、

有利子負債の額が10億円以上の場合は、

債務者ごとに資本金等の額の1/2相当額と1,000万円のいずれか少ない金額以上の含み損がないと

有利子負債の額が10億円未満の場合は、

債務者ごとに資本金等の額の1/2相当額と100万円のいずれか少ない金額以上の含み損がないと

税務上評価損の計上ができませんので、特に注意が必要です。

 改正公表直後は、今後、事業再生における債務免除益課税の問題の解決がかなり楽になるのではないかと期待しておりましたが、まだまだ、難題は多く、我々税務会計専門家の出番は多そうです。

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