専門家でも理解が難しく落とし穴にはまる不思議な税金、消費税の謎に迫るユニークな書。熊王征秀(著)「クマオーの消費税トラブル・バスター」
専門家でも理解が難しく落とし穴にはまる付加価値税である不思議な税金、消費税。
「クマオー」こと熊王征秀税理士の「クマオーの消費税トラブル・バスター」(5版:2008年12月)は、そんな消費税の謎に迫るユニークな書。
先日ご紹介しました、賃貸住宅建築時の自販機設置による消費税還付の問題についても、「自動販売機撲滅作戦」という消費税法30条の改正案を提案されています。
■「自動販売機撲滅作戦」:消費税法30条の改正案
熊王征秀税理士は、賃貸住宅建築時の自販機設置による消費税還付スキームについて、違和感を拭い去ることができず、我々税理士は、ここまでテクニカルに申告しなければならないのかと自問自答。
そこで、以下のような、仕入れに係る消費税額の控除の規定である消費税法30条の改正案を提案。
すなわち、仕入れに係る消費税額の控除については、個別対応方式か一括比例配分方式による按分計算を原則とし、課税売上高95%以上の場合の全額仕入税額控除を課税売上高が1億円以下の事業者の特例措置とし、課税事業者選択届出書を提出した事業者は、個別対応方式により仕入税額控除しなければならない、と改正すべきというもの。
専門家でないとわかりにくいのですが、課税売上高を恣意的に作ることにより課税売上高95%以上にして全額仕入税額控除を受けたり、課税売上高の割合を高める一括比例配分方式による仕入税額控除を受けたりする、消費税の還付を極力制限しようというものです。
■上記から感じること
賃貸住宅建築時の自販機設置による消費税還付スキームについての違和感、私も同感です。
ただし、一部を改正してもまたその抜け穴が生じるような気もいたしますし、政策的に設けられた非課税、免税業者、簡易課税といった制度が不自然であると言わざるを得ず、極力原則的な課税方法に統一するというのが本来は望ましいような気もいたします。
実現可能かはわかりませんが、「民主党政策集INDEX2009」によれば、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し控除しきれない部分については給付するという、「給付付き消費税額控除」というセイフティー・ネットも検討が始まっているようですから。
その他にも、土地付建物の譲渡対価の区分とか、免税事業者の消費税の価格転嫁とか、消費税ならではの勘違いしそうな話題が満載の「クマオーの消費税トラブル・バスター」、頭の体操にいかがでしょうか。
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