事業再生ADRの申請企業に対する債権への貸倒引当金はどうするのか。「事業再生ADR申請増加 債権、どう会計処理」(2009年10月10日付日本経済新聞)
当ブログでもお伝えしたように、株式会社日本航空(JAL)も事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)を活用の方針が示されるなど、事業再生ADRを利用する企業が急増中。
2009年10月10日付日本経済新聞に掲載された、「事業再生ADR申請増加 債権、どう会計処理」という記事を読むと、事業再生ADRの申請企業に対する債権への貸倒引当金はどうするのか、事業再生ADRを9月に申請した株式会社ウィルコム等の取引先が困惑しているとのことです。
■事業再生ADRの申請企業に対する債権への貸倒引当金はどうするのか困惑する理由
事業再生ADRが、一般に、金融機関のみを対象とし、仕入先等のその他一般債権者の債権は対象に含めないためです。
例えば、9月28日にADR手続が成立した株式会社コスモスイニシア(旧株式会社リクルートコスモス)の場合、金融機関は、同社に対する債権を不良債権として区分し、20%前後からほぼ全額を引き当てたが、仕入先等のその他一般債権者である株式会社長谷工コーポレーションは、手続後も手形債権の引当金を積んでいないとのこと。
■個別具体的な検討が必要
「金融商品に係る会計基準・同注解」に従い、案件ごとの個別具体的な検討が必要かと思われます。
債権の区分については、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権である「正常債権」に区分される場合もあれば、経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権である、「貸倒懸念債権」に区分される場合もありそうです。
「正常債権」に区分される場合の貸倒見積高の算定については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定することになります。
「貸倒懸念債権」に区分される場合の貸倒見積高の算定については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定し、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用することになります。
(1)財務内容評価法
債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法
(2)キャッシュ・フロー見積法
債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法
■がんばれウィルコム
9月14日の当ブログで、ウィルコム高速データ通信サービス「WILLCOM CORE 3G」をこれは便利と賞賛させていただきましたが、9月24日に事業再生ADRの申請を行った株式会社ウィルコム。
やっぱり、「WILLCOM CORE 3G」、便利なので何とか事業再生を成功させていただきたいところです。
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