平成21年改正後も「民事再生手続開始時」「民事再生計画認可時」のいずれかで資産の評価損計上が可能です。
「週刊税務通信」No.3087平成21年10月26日号によると、平成21年税制改正後の法人税法33条2項で規定する資産の評価損が計上できる「特定の事実」として、法人税法施行令68条1項の規定が「物損等の事実」と「法的整理の事実」に分ける整理がなされましたが、民事再生法については明記されていないため、民事再生法の適用が「法的整理の事実」に含まれるのか、民事再生手続開始時に評価損を計上できる取り扱いが従来通りできるのか、疑義があるのと見解が生じていたとのこと(ちなみに、私はそう思いませんでしたが)。
「週刊税務通信」が国税当局に確認したところによると、
民事再生法の適用が「法的整理の事実」に含まれる趣旨であること
民事再生手続開始時に評価損を計上できる取り扱いが従来通りできること
とのことで一安心です。
■民事再生法での財産評定損益(資産の評価損益)の税務上の取扱い
平成17年度税制改正後は、開始決定時評価換え(損金経理方式)と認可決定時評価換え(別表添付方式)が、明文の規定はありませんが選択が可能と解されていましたが、平成21年改正後も「週刊税務通信」が国税当局に確認したところによると同様の解釈でよいようです。
ただし、開始決定時評価換え(損金経理方式)の場合は、評価益は益金算入せず、含み損益が少額の資産等も対象ですが、債務免除益等から控除する欠損金の順番は従前通り青色欠損金等を期限切れ欠損金に優先しますので、その選択には注意が必要です。
■上記から感じること
平成17年税制改正後も、民事再生法適用の場合の開始決定時評価換え(損金経理方式)については、法人税法や政省令では明文の規定が無く、法人税法基本通達を論拠とするのみでしたので、事再生法適用の場合は認可決定時評価換え(別表添付方式)に一本化されているような記述も多く見かけました。
実務上は、認可決定時評価換え(別表添付方式)については、
資産の評価差額の最低限度が一定の資産区分ごとに資本金等の額の1/2相当額と1,000万円のいずれか少ない金額
平成21年4月1日以後に再生計画認可の決定等があったこと、その他一定の事実が生じた場合については、有利子負債の額が少額(10億円未満)である企業再生である中小規模再生は、資産の評価差額の最低限度を資本金等の額の1/2相当額と100万円のいずれか少ない金額
という現実的には厳しい制約があるため、開始決定時評価換え(損金経理方式)を採用せざるを得ないケースが多くあると思われます。
そうすると、解釈を誤り事業再生に支障をきたすというようなことが無いように、租税法定主義に則り、民事再生手続適用時の開始決定時評価換え(損金経理方式)と認可決定時評価換え(別表添付方式)の選択適用を、やはり法人税法上に明記すべきではないかと思われます。
今後の企業再生税制についての、いっそうのよりよい改正を期待いたします。
| 固定リンク
« 今、何回も聞き直し新たな感動、日本が生んだ最高のロック・アルバム。サディスティック・ミカ・バンド(Sadistic Mika Band)「黒船(Black Ship)」 | トップページ | 強面ぞろいの「MUSIC MAGAZINE(ミュージック・マガジン)」のライター陣の中で私を魅了した洒落たセンスの持ち主、小倉エージ氏のインタビュー集で検証するクリス・トーマス(Chris Thomas)「黒船」伝説。「ロック・オブ・エージズ 小倉エージ・インタヴュー&トーク集 MUSIC MAGAZINE増刊」 »
「事業再生・倒産等(ややプロ向)」カテゴリの記事
- 「倒産」状態の債務者に対する債務免除に関する税務について執筆させていただいた書籍の改訂版が発売されました。リスクモンスター株式会社(編)「与信管理論〔第2版〕」(2015.07.19)
- 保証人、債権者ともに課税関係は生じないことが確認されています。「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証債務の整理に係る課税関係の整理に関するQ&Aについて」(2014.06.21)
- 会社更生手続以外の実務にも実務に活かせる事業再生ノウハウの最前線の調査分析。松下淳一 (編集)・事業再生研究機構 (編集) 「新・更生計画の実務と理論」(2014.05.25)
- 民事再生法の正しい理解に活用するのに最適な統計値。山本和彦、山本研(編集)「民事再生法の実証的研究」(2014.04.27)
「会社・個人の税金・会計」カテゴリの記事
- 紙幅は狭いながら濃い内容です。「〔特集〕2018よい節税悪い節税」週刊エコノミスト 2018年01月30日号(2018.02.11)
- 元旦日本経済新聞1面。「パンゲアの扉 つながる世界 溶けゆく境界 もう戻れない デジタルの翼、個を放つ 混迷の先描けるか」(2018.01.01)
- 遂にグローバルタックスプランニングにも言及。「大増税&マイナンバー時代の節税術」 (週刊ダイヤモンド 2017年 12/23 号)。(2017.12.24)
- 一番使いやすい。島田 哲宏(著)「Q&Aで解決 欠損金の繰越控除の判断とポイント」(2017.02.11)
- 特に、資産課税関係に注目です。自由民主党、「平成29年税制改正大綱」を公表。(2016.12.11)
コメント