法務・会計・税務をわかりやすく語る第一人者が事業再生についても詳しく言及。太田達也(著)「「債権処理の税務・会計・法務」完全解説」
法務・会計・税務をわかりやすく語らせたら、この人が一番ではと思うのが、新日本有限責任監査法人の太田達也公認会計士。
私も実務上、太田達也公認会計士の著作を常日頃愛用させていただいておりますが、新刊、「「債権処理の税務・会計・法務」完全解説」(2009年8月)が発売。
本書は、タイトルからは、わかりにくいですが、実は、事業再生の法務・会計・税務についても、かなり詳しく言及がなされており、事業再生に携わる税務・会計の専門家は見逃すことがないようにしておきたいところです。
■以前の著書のアップ・デイティッド版
新刊、「「債権処理の税務・会計・法務」完全解説」(2009年8月)ですが、その内容は、出版社は異なるものの、以前の太田達也公認会計士の著書、「設例と図解でわかる不良債権の法務・会計・税務」(2002年10月)のアップ・デイティッド版。
ただし、ページ数も大幅にアップし内容もより充実。
もはや芸術的とも言うべき、法務・会計・税務の解説のわかりやすさはもちろんのこと、取引先が実質的に倒産している場合にどうやって貸倒処理をすれば税務上認められるか、旧書でも触れられていた未収利息の不計上の仕方についての言及など、会社の実務的立場に立った視点も素晴らしいところ。
■新株払込方式のDES(いわゆる「擬似DES」、「現金払込型DES」)
また、本書では、「新株払込方式」と呼んでいますが、いわゆる「擬似DES」、あるいは「現金払込型DES」についても言及がなされています。
以前当ブログでもご紹介した太田達也公認会計士の見解と同様、原則として課税所得に影響を与えないが、租税回避目的の場合は行為計算の否認規定により積極的に否認されるおそれがあると述べていますが、より保守的に、金銭出資により払い込まれた資金がいったん運転資金として使用され、その後にそれとは無関係に債務の返済が行われたという実態が必要であるとの考えが示されている点には注意が必要でしょう。
■事業再生の法務・会計・税務についての言及
新刊での注目点は、民事再生法や会社更生法など事業再生の法務・会計・税務についても、紙幅を多く割きかなり詳しく言及。
中でも面白いと思ったのが、今まで触れられているのをあまり見かけたことのない、民事再生手続や会社更生手続での債権調査損益の税務上の損金・益金算入時期。
債務の帳簿残高と債権届出額との差異により生ずる債権調査損益について、会計上債務計上したとしても、税務上は申告調整を行い、再生債権や更生債権の法律上の債権確定時に損金・益金すべき場合がある点について触れられています。
事業再生についての言及が増えているということは、市場経済の敗者復活のルールとして民事再生法や会社更生法が定着してきていることの大きな現われではないでしょうか。
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