平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.25。不動産証券化関係:特定目的会社等の課税の特例の見直し等(法人)
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第25回。
今回は、昨年12月に自由民主党平成21年度税制改正大綱(2009年度与党税制改正大綱)が公表された際にも触れさせていただきましたが、不動産証券化関係:特定目的会社等の課税の特例の見直し等(法人)です。
■不動産証券化関係:特定目的会社等の課税の特例の見直しの概要
特定目的会社及び投資法人で一定の要件を満たすものは、、所得の金額を限度として、その事業年度に係る支払配当の額を損金の額に算入することができますが、その要件につき以下の改正がありました。
【機関投資家の範囲の見直し】
特定目的会社の支払配当金の損金算入要件である特定社債の引受先及び特定目的借入の借入先、投資法人の支払配当金の損金算入要件である借入先の機関投資家に、沖縄振興開発金融公庫が加えられました。
特定目的会社の支払配当金の損金算入要件である特定社債の引受先及び特定目的借入の借入である機関投資家に、原資産を不動産とする特定目的会社が発行する特定社債、特定目的借入れ等を証券化する特定目的会社(特定債権流動化特定目的会社)が加えられました。
【90%超配当要件の基礎の配当可能所得から配当可能利益への変更】
特定目的会社及び投資法人の支払配当の額が配当可能所得の金額の90%相当額を超えていることとする要件が、支払配当の額が配当可能利益の額の90%相当額を超えていることとされました。
【投資法人の合併に関する改正】
投資法人に関する法令の規定において投資法人の合併交付金の取扱いが明確化されたことに伴い、損金算入の対象となる支払配当等の額に配当見合いの合併交付金が含まれることが明確化されました。
■不動産証券化関係:その他の改正の概要
【所有権移転登記に対する登録免許税の軽減措置の延長】
平成21年4月1日以後に引き上げるとされていた、特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権移転登記に対する登録免許税の軽減措置(8/1000)を1年間据え置かれました。
【不動産取得税の課税標準の特例措置の延長】
特定目的会社が資産流動化計画に基づき取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限が2年延長されました。
投資信託により取得する一定の不動産および投資法人が取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限が2年延長されました。
■上記から感じること
不動産証券化における特定目的会社等は、単なる投資資金を集めるヴィークル(器)であって、導管体としての機能しかないとされ、 特定目的会社等をパス・スルーして利益を分配する投資家側で課税するという、パススルー課税(構成員課税)の考え方がとられます。
ところが、従来の税制では、特定目的会社(TMK)等について、税務上の課税所得が会計上の利益よりも大きくなると、配当等の支払額が一定の配当可能所得の90%相当額を超えていることという要件が満たせなくなり、特定目的会社(TMK)及び投資法人が課税され、パススルー課税(構成員課税)が実現できない事態が容易に起こりえました。
例えば、会計上で減損損失を認識する場合などが挙げられます。
市場の効率化を促す完全なパススルー課税(構成員課税)を実現するためには不完全な税制と言わざるを得ないため、今回の90%超配当要件の基礎の配当可能所得から配当可能利益への変更は、とりあえず大きな前進ということができます。
二重課税が生じうる税制は、租税負担の公平性の観点から問題があると言わざるを得ず、完全なパススルー課税(構成員課税)の実現を期待したいところです。
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