平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.21。経済危機対策による追加税制改正:直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の500万円非課税制度(個人)
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第21回。
既に当ブログでもご紹介のとおり、今年は、100年に一度という経済危機を受け、政府与党の「経済危機対策」が4月10日に決定、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」が4月27日に国会提出、5月13日に衆議院で可決、6月19日に参議院本会議で成立・公布・施行という離れ業で追加の税制改正が行われました。
今回は、その経済危機対策による追加税制改正:直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の500万円非課税制度(個人)についてです。
■従来の住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の特例
・概要
相続時精算課税制度について、
自己の居住の用に供する一定の家屋の新築又は取得
(家屋とともに取得する土地等を含む)
をするために資金の増与を受ける場合、
又は自己の居住用の用に供する家屋の一定の増改築等のための資金の
増与を受ける場合に限り、
65歳未満の親からの贈与についても適用されされるとともに、
非課税枠も2,500万円に1,000万円上乗せされ3,500万円となります。
・贈与者の年令要件
ありません。65歳未満の親からの贈与についても適用されます。
・受贈者の年令要件
20歳以上であることは、通常の相続時精算課税制度と同様必要です。
・一定の家屋
新築
又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合には、25年以内)の家屋で
床面積が50㎡以上であることその他の要件を満たすもの。
・一定の増改築
増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替等であって、
当該増改築の工事費用が100万円以上であること、
当該増改築の床面積が50㎡以上であることその他の要件を満たすもの。
・適用期限
平成20年1月1日から平成21年12月31日までの贈与に対する時限措置です。
■追加税制改正による直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の500万円非課税制度
・概要
平成21年1月1日から平成23年3月31日までの間に、
その年の1月1日において20歳以上である者が、
自己の居住の用に供する一定の家屋の新築又は取得
(家屋とともに取得する土地等を含む)、
又は自己の居住用の用に供する家屋の一定の増改築等のための資金を、
その直系尊属からの贈与増与を受ける場合には、
当該期間を通じて500万円まで贈与税を非課税とする制度が
創設されました。
・直系尊属
例えば、実父母や、実祖父母があたり、実父母から子だけでなく、実祖父母から孫、実曽祖父母から曾孫への贈与も対象となります。
しかし、配偶者の父母は、直系ではなく傍系の尊属となり、本制度の適用はありませんので注意が必要です。
・非課税制度
従来の住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の特例が、相続時精算課税の特例であったため、相続発生時には、贈与財産を贈与時の価額で相続財産に加算する必要がありましたが、本制度は、非課税の特例のため相続財産への加算はありません。
・暦年課税、相続時精算課税の非課税枠との関係
併用が可能ですが、その場合は暦年課税、相続時精算課税のいずれかについては選択が必要になります。
暦年課税を選択すると、500万円+暦年課税の基礎控除額110万円=610万円までの贈与税が非課税
相続時精算課税を選択すると、500万円+相続時精算課税の特別控除額3,500万円=最大4,000万円までの贈与税が非課税
となります。
■上記の改正から感じること
高齢者から次世代への財産の移転、住宅投資の促進という観点からは、好ましい税制改正であると思われます。
ただし、
倫理的側面において贈与は労力を要さずに得られる「不労所得」であることから子供や孫等への教育的配慮も考慮すべきこと、
相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与税と相続税を一体化して、生前に贈与を受けた財産は親の死亡時に相続財産に合算して相続税で精算するいわば「相続の前倒し」とも言える制度であるとともに、一度選択すると通常の暦年課税方式(基礎控除110万円の毎年利用)へは戻れないこと、
などにも十分に留意して、実行する際には慎重に判断すべきかと思われます。
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