平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.20。経済危機対策による追加税制改正:試験研究費税額控除(研究開発促進税制)の限度額引上げと税額控除限度超過額の繰越期間延長等(法人)
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第20回。
前回、ご紹介のとおり、今年は、100年に一度という経済危機を受け、政府与党の「経済危機対策」が4月10日に決定、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」が4月27日に国会提出、5月13日に衆議院で可決、6月19日に参議院本会議で成立・公布・施行という離れ業で追加の税制改正が行われました。
今回は、その経済危機対策による追加税制改正:試験研究費税額控除(研究開発促進税制)の限度額引上げと税額控除限度超過額の繰越期間延長等(法人)についてです。
■従来の試験研究費税額控除(研究開発促進税制)の概要
【基本制度(恒久的措置)】
試験研究費×控除率=法人税額からの控除額(法人税額の20%が限度)
控除率
試験研究費割合(試験研究費の総額÷当期を含む4年間の平均売上)が
10%以上→10%
10%未満→8%+試験研究費割合×0.2
資本金が1億円以下等の一定の条件を満たす中小企業者等→上記にかかわらず12%
【増加・高水準型制度(時限措置)】
平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間の開始事業年度に適用。
以下の2つからの選択で、選択した増加型は基本制度と重複適用。
増加型:(当期試験研究費-直近3事業年度の平均試験研究費)×5%
直近2事業年度よりも当年の試験研究費が多いことが条件
高水準型:(当期試験研究費-平均売上金額×10%)×税額控除割合
税額控除割合=(試験研究費割合-10%)×0.2
【控除限度額】
増加分の控除限度額は、基本制度の法人税額の20%と別に法人税額の10%、合計で法人税額の30%。
【税額控除限度超過額の繰越控除】
繰越後の控除を受ける年度の損金算入試験研究費の額が前1年以内開始事業年度の損金算入試験研究費の額を超えていれば、繰越後の控除を受ける年度の法人税額の20%相当額を限度に繰越控除が可能。
【地方税への適用】
中小企業者等の場合は、法人税に加え、法人地方税にも適用有、法人事業税には適用無。
■試験研究費税額控除(研究開発促進税制)に関する追加税制改正の概要
【控除限度額の引上げ】
基本制度の控除限度額が、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する事業年度において、現行その期の法人税額の20%としているものが30%に引き上げられる改正が行われました。
したがって、基本制度と増加・高水準型制度と合わせて、法人税額の40%が限度額となりました。
【税額控除限度超過額の繰越期間延長等】
平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する事業年度において、繰越控除の対象となる金額に、平成21年度に生じた繰越税額控除限度超過額を含めることができるようになり、繰越控除の適用を受けることができる限度額は、平成23年度の法人税額の30%となりました。
また、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度において、繰越控除の対象となる金額に、平成21年度又は平成22年度に生じた繰越税額控除限度超過額を含めることができるようになり、繰越控除の適用を受けることができる限度額は,平成24年度の法人税額の30%となりました。
従来の制度では、1年間の繰越控除が可能でしたが、今回の改正では、翌年を超えて,利用することが可能となり、控除を受けることができる期間が最長で3年に延長されたことになります。
ただし、繰越後の控除を受ける年度の損金算入試験研究費の額が前1年以内開始事業年度の損金算入試験研究費の額を超えていればという要件は緩和されていませんので、平成22年度、平成23年度、平成24年度の3事業年度のいずれかの事業年度で、当年度の試験研究費が前年度の額を上回らなければ、繰越控除制度の適用が受けられません。
平成23年度と平成24年度で要件に該当しなければ、試験研究費総額に係る税額控除制度の適用のみとなるので、税額控除限度額は法人税額の20%に戻り、結果として従来どおりの制度と変わりのないものとなる点には注意が必要です。
【特別試験研究費の税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制の改正】
なお、詳細は省略いたしますが、産学官連携の共同研究・委託研究に関する特別試験研究費の税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制についても同様の改正が行われました。
■上記の改正について感じること
昨年の改正時で触れさせていただいたことの繰り返しとなりますが以下の点にご注意ください。
・適用忘れに注意!
租税特別措置法の税額控除は、その適用を受けるために余分にキャッシュ・アウトしたのでない限り、「お金の出ない節税」につながるすばらしい制度ですが、適用忘れが多いので注意が必要です。
・製造業以外でも適用可能!
試験研究費税額控除(研究開発促進税制)の対象となる試験研究費は、
「製品の製造」
又は「技術の改良・考案もしくは発明」
に係る試験研究のために要する費用
であり、製造業以外の業種の「技術の改良・考案もしくは発明」に係る試験研究のために要する費用も対象となると解されますので、特にご注意ください。
・赤字会社でも適用可能!
「うちは、赤字会社だから税額控除は関係ない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、早合点は禁物です。
一定の条件を満たせば、控除しきれない額を控除できますので、赤字会社でも適用可能な場合がありますので、この点も十分にご注意ください。
特に今回の追加税制改正で、繰越期間延長が行われていますので、従来よりも赤字会社での利用機会が増加していますことにはくれぐれもご注意を。
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