平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.19。経済危機対策による追加税制改正:中小企業の交際費等の限度額の400万円から600万円への引き上げ(法人)
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第19回。
税制改正は、一般的には、12月の政府与党税制改正大綱の発表から3月末に法案の可決決定、4月1日より施行という流れで進みます。
ところが、今年は、100年に一度という経済危機を受け、政府与党の「経済危機対策」が4月10日に決定、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」が4月27日に国会提出、5月13日に衆議院で可決、6月19日に参議院本会議で成立・公布・施行という離れ業で追加の税制改正が行われました。
今回は、その経済危機対策による追加税制改正:中小企業の交際費等の限度額の400万円から600万円への引き上げ(法人)についてです。
■従来の制度
【交際費の原則損金不算入】
企業の支出する交際費は、販売の促進や取引の円滑化を目的とする事業遂行上必要な経費であるこことから、本来は税務上も損金とされるべきものです。
ところが、過度な接待・贈答は企業経営の健全性や商道徳の面から好ましくないとの観点、交際費を無制限に損金算入とすると税負担の公平の観点から好ましくないとの観点等から、租税特別措置法により、原則として損金として認めないという税制となっています。
【平成18年税制改正による1人当り5,000円以下の一定の飲食費の除外】
取引先等の社外の者の設定等のために支出する飲食費で1人当り5,000円以下の一定のものは交際費等から除外されるようになりました。
【中小法人の交際費の損金不算入額の特例】
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下の中小法人については、中小企業支援や景気対策の観点から、損金不算入額を以下の通りとする特例が設けられています。
・支出交際費額のうち年400万円の定額控除額以下の場合
支出交際費額×10/100が損金不算入額
・支出交際費額のうち年400万円の定額控除額超の場合
400万円×10/100+(支出交際費額-400万円)
・中小法人の損金算入限度額
上記より、360万円が限度額という言い換えることができます。
■経済危機対策による追加税制改正
【改正の概要】
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下の中小法人についての年400万円の定額控除額が600万円に引き上げられました。
【改正後の中小法人の交際費の損金不算入額の特例】
・支出交際費額のうち年600万円の定額控除額以下の場合
支出交際費額×10/100が損金不算入額
・支出交際費額のうち年600万円の定額控除額超の場合
600万円×10/100+(支出交際費額-600万円)
・中小法人の損金算入限度額
上記より、540万円が限度額という言い換えることができます。
【適用時期】
平成21年4月1日以後に終了する事業年度分について遡って適用されます。
■上記から感じること
平成21年4月1日以後に終了する事業年度分の法人の確定申告期限は、延長をしていなければ6月30日ですから、6月19日に成立・公布・施行の経済危機対策による追加税制改正、正に異例の措置であったといえます。
中小企業にとっては嬉しい改正ですが、600万円以下でも交際費の10%は損金に算入されないこと、事業遂行上本当に必要な交際費は重要ですが交際費は無駄使いを生みやすいことには十分に留意する必要があります。
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