いつもレコードのことばかり考えている男による待望のディスク・ガイド。「マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚。小西康陽。」
音楽評論家、高橋健太郎氏が、「MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2009年 05月号」で、「アルバム・ランキング・ベスト100 1980~1989年編」での、ピチカート・ファイヴ(Pizzicato Five)「カップルズ(Couples)」(1987年)の推薦文が1990年代の音楽シーンを言いえて妙。
音楽は天賦の才能を持った音楽家が宇宙と交信するとふと降りてくるものという幻想を完膚なきまでに否定し、音楽家がすべきことはまず聞くことであり、ただただ聞くことの延長上にしか音楽史に何かを付け加えることはできないという、ピチカート・ファイヴ(PIZZICATO FIVE)の思想が、1990年代という時代を染め上げたというもの。
私も正に同感(ただし、当時は、「カップルズ(Couples)」からじゃ、私にはよくわからずその後の作品で思い知らされることになりましたが・・・)。
そんな、世の音楽好きを震撼させた恐るべき聴き手、小西康陽の聴くためのディスク・ガイドとしては初と思われる単行本、「マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚。小西康陽。」(2009年6月)が発売されました。
小西康陽のディスク・ガイドとして有名なのは、発行人:朝妻一郎、編集人:岩本晃市郎「POP・IND'S vol.7〔no.08〕」(1991年。ちなみにこの号で休刊)に掲載された、菅岳彦氏による6時間インタビュー「PIZZICATO FIVE BEST 200 DISC」。
A4サイズの見開き6ページ、当時のピチカート・ファイヴ(PIZZICATO FIVE)の盟友、高浪敬太郎との2人によるディスク・ガイドの体裁をとっていますが、行われたのは小西康陽邸、高浪敬太郎はあまりにも長くて途中退席ということから、事実上、小西康陽のディスク・ガイド記事。
ロック、ポップス、ブラック・ミュージック、サントラ等ジャンルを超えたセレクトは、今思えば、DJの時代ともいえる1990年代の幕開けにふさわしいもの。
それらの時代を経た、現代の音楽アーカイヴ時代においては比較的手に入りやすいものが多くなったかもしれませんが、当時は垂涎のディスク・ガイド、さすが小西康陽と周囲を圧倒。
その後、小西康陽は、雑誌記事、エッセイなどで、コンスタントに音楽について語ってきましたが、ディスク・ガイドとしてまととまったものとしては、昨年発売された、常盤響との共著「いつもレコードのことばかり考えている人のために。」(2008年5月)。
この本は、ディスク・ガイドといっても、「見る」ためのもので、アナログ・レコードのジャケットの写真集のようなもの。
取り上げられているレコードもかなりマニアックで、私からすると、「ずいぶん遠いところに行ってしまってとても追いつけなくなったなぁ」という印象が。
当初、4月に発売予定だった「マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚。小西康陽。」についても、先に発売された復刻関連CDの広告を見ると、知らないCDばかり。
という訳で、いったいどんな内容だろうと恐る恐る開いてみると、確かに最近の小西康陽のフロンティアはこういったところなのかと思わせる作品も多いのではありますが、本来は意外というのが変ですが、自作や、「POP・IND'S 」でも紹介されたものもあり、一安心。
私の実用書としても、活躍してもらえそうです。
ところで、先日もご紹介した「音楽とことば あの人はどうやって歌詞をかいているのか 」(2009年3月)の江森丈晃氏によるインタビューによると、長いこといい芸術を作るために必要なのは、ほかの人が作った芸術をなるべくたくさんインプットすることだと思っていたが、そのやりかたは古いと思うし、それでなんとかなった時代は終わったと思うと語る小西康陽。
まるで、上述の高橋健太郎氏の最大級の賛辞に呼応するかのような言葉ですが、このたくさん聴いていて当たり前の音楽アーカイヴ時代、今度は、小西康陽の新次元の音楽に期待したいと思います。
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