ゼネラルモーターズ (General Motors Corporation)が「事前調整型」による米連邦破産法11条(チャプター・イレブン Chapter 11)申請。
2009年6月1日、遂に、ゼネラルモーターズ (General Motors Corporation)が米連邦破産法11条(チャプター・イレブン Chapter 11)を申請。
ところで、報道によると、今回のゼネラルモーターズ (General Motors Corporation)の米連邦破産法11条(Chapter 11, Title 11 of the U.S. Code)の申請は、「事前調整型」によるものとのこと。
通常、日本の法的な倒産手続きの場合、スポンサーと支援について合意済みの手続きを「プレパッケージ型(pre-packaged)」と呼びますが、債権者と事前に調整するとは、さすがに金融大国アメリカの法的倒産手続きは一歩進んでいます。
■米国の「事前調整型のチャプター・イレブン」
ダイヤモンド・オンライン(DOL)の「弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く」【第64回】平成21年5月29日「GM破産法申請が間近! 「事前調整型」チャプターイレブンで再建なるか?」という記事がわかりやすく参考になります。
永沢徹弁護士によると、「事前調整型のチャプター・イレブン」とは、チャプター・イレブン申請後に再建計画が承認されるには、関係当事者間の交渉が必要であり、倒産手続き完了まで膨大な時間がかかる恐れがあり、これを回避するための手法で、調整の段階によって、事前完全合意型(pre-packaged)、事前交渉型(pre-negotiated)・事前準備型(pre-arranged)があり、ゼネラルモーターズ (General Motors Corporation)の場合は、事前交渉型(pre-negotiated)・事前準備型(pre-arranged)とのこと。
■日本の「プレパッケージ型(pre-packaged)」
日本では、民事再生手続や会社更生手続の申立にあたり、事前に水面下で事業譲渡や資金援助の相手先となるスポンサーを決定する手法を、「プレパッケージ型(pre-packaged)」と呼び、平成15年の東ハトの民事再生手続を契機にかなり一般化されてきました。
しかし、事前の、しかも通常は入札に基づかない相対取引であることから、譲渡金額の妥当性等に問題が生じうる場合もあり、「あらかじめスポンサー等を選定しなければ事業が劣化してしまう状況にあること。」、「実質的な競争が成立するように、スポンサー等の候補者を募っていること。またはこれが困難である場合には、フリーキャシュフローに照らして公正であること。」等の7つの条件を満たすべきとする、いわゆる「お台場アプローチ」が提唱されるなど、スポンサーと債権者の権利調整については様々な議論があります。
■上記から感じること
日本の事業再生の手法も、10年前の旧会社更生法、旧和議法、旧破産法、旧商法の特別清算、私的整理の時代から、現在は、DIP型を含む新会社更生法、事業譲渡が可能な新民事再生法、新破産法、会社法の特別清算、私的整理ガイドライン、中小企業再生支援協議会のスキーム、整理回収機構のいわゆる「RCCスキーム」、事業再生ADR等百花繚乱状態ともいえるような状況となってきています。
しかし、債権者と事前に調整する、金融大国アメリカの「事前調整型」チャプター・イレブン、まだまだ我が国の事業再生手法にも進化の余地はありそうです。
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