座談会形式でよくわかるDIP型会社更生法。「座談会 DIP型会社手続の概要をつかむ 大きく変わる会社更生手続」(「会計・監査ジャーナル2009年6月号」)
■座談会のメンバー
東京地方裁判所民事第8部 部総括判事 難波孝一
弁護士・クリード監督委員兼調査委員 瀬戸英雄
弁護士・あおみ建設申立代理人 永沢徹
公認会計士・日本公認会計士協会経営研究調査会再生支援専門部会長 杉本茂
公認会計士・日本公認会計士協会経営研究調査会副委員長 名古屋信夫
司会:公認会計士・日本公認会計士協会経営研究調査会担当常務理事 小見山 満
の各氏。
■内容
「DIP型会社更生法」の当事者である裁判官・弁護士を囲み、「会社更生手続の概要」、「民事再生手続との違いについて」、「従来型管財人及びスポンサーとは」とはに始まり、「DIP型の会社更正法」については、「DIP型会社更生手続における監督委員と調査委員の具体的役割」、「公認会計士の役割」など、17ページに及ぶ具体的かつ充実の座談会。
■上記記事から感じること
まず、「DIP型会社更生法」の第1号案件「株式会社クリード」の監督委員兼調査委員の瀬戸英雄弁護士の、前例がない中で手探りで始められた業務の実際の話が興味深い。
開始前の監督委員兼調査委員の時の、DIP型会社更生の4つの要件を満たすか等の調査の際に、会社更生の場合は手続に拘束される担保権者である金融機関からはDIP型であることへの反発が意外に少なかったという話、開始後の監督委員がとれた調査委員の時の、取締役会、監査役会、株主総会というガバナンス不在を補うため、管財人会議に参加し業務執行の意思決定に積極的に関与された話など。
また、第2号案件「日本綜合地所株式会社」に関しての、難波孝一裁判官の調査員の、下に大口の担保権者が集まって互いに意見を調整し、申立代理人側と調整し合うという、アメリカのチャプター11における債権者委員会に似た試みが行われているとの報告も興味深い。
マンション・デベロッパーの倒産事件は、金融機関の土地に対する抵当権と建設会社の建物に対する商事留置権の競合、提携住宅ローンの問題、業界全体の落ち込みによるスポンサー探しの困難性など、本当に難題が多いので、「DIP型会社更生法」が問題解決に役立つのであれば何よりです。
難解な法律雑誌でもなく、座談会形式であることもあり、「会計・監査ジャーナル2009年6月号」の「座談会 DIP型会社手続の概要をつかむ 大きく変わる会社更生手続」、「DIP型会社更生法」の実情を知るのに、会計専門家でない方にもお勧めです。
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