平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.4。平成21年及び平成22年に取得した土地等の先行取得した場合の課税の特例の新設(個人、法人)
ねじれ国会による混乱から1ヶ月遅れで成立した前年と異なり、平成21年度税制改正法案は、3月27日に成立し、3月30日に公布、一部を除き4月1日より施行され、年度内に決着。
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第4回。
今回は、平成21年及び平成22年に取得した土地等の先行取得した場合の課税の特例の新設(個人、法人)についてです。
■従来の土地等の譲渡所得の制度(前回の復習です)
・個人
譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年超
→長期譲渡所得として所得税15%+住民税5%=合計20%分離課税
譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年以下
→短期譲渡所得として所得税30%+住民税9%=合計39%分離課税
他の所得とは、ごく一定の場合を除いて、損益通算不可(譲渡損失が出た場合等)
・法人
他の所得と同一に総合課税
したがって、他の所得とは損益通算が可能
■改正点
土地需要を喚起するという趣旨から下記の改正が行われました。
・個人
不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う個人が、
平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に、
国内にある土地等の取得をし、
取得をした日の属する年の翌年3月15日までに、
この特例の適用を受ける旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合、
取得をした日の属する年の12月31日後10年以内に、
所有する他の土地等(事業の用に供しているものに限る)の譲渡をしたときは、
先行取得した土地等について、
他の土地等の譲渡益金額の100分の80
(その年の12月31日においてこの特例を受ける先行取得の土地等が平成22年1月1日から同年12月31日までの間に取得をされたもののみである場合には100分の60)
に相当する金額について圧縮記帳することができます。
ただし、対象となる土地等に棚卸資産は含まれず、配偶者や特別な関係者等からの取得、相続や遺贈、贈与、交換による取得なども対象外とされ、前回ご紹介した平成21年及び平成22年に取得した土地等の譲渡所得の1,000万円の特別控除の適用を受ける譲渡も対象外で、所有する他の土地等は事業用資産である必要があります。
・法人
法人が、
平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に、
国内にある土地等の取得をし
取得の日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに、
規定の適用を受ける旨の届出書を所轄税務署長に提出した場合、
取得の日を含む事業年度終了の日後10年以内に、
所有する他の土地等の譲渡をしたときは、
先行取得した土地等について、
他の土地等の譲渡益金額の100分の80
(その年の12月31日においてこの特例を受ける先行取得の土地等が平成22年1月1日から同年12月31日までの間に取得をされたもののみである場合には100分の60)
に相当する金額について圧縮記帳することができます。
ただし、対象となる土地等に棚卸資産は含まれず、特殊な関係にある個人又は法人からの取得、合併や分割、贈与、交換等による取得、所有権移転外リース取引による取得は対象外とされ、代物弁済による取得も対象外、前回ご紹介した平成21年及び平成22年に取得した土地等の譲渡所得の1,000万円の特別控除の適用を受ける譲渡も対象外とされます。
法人税額に基づき算出する法人住民税法人税割、法人税法上の所得に基づき算出する法人事業税についても、同様に改正の効果が及びます。
■適用時期
・個人
個人が平成21年1月1日以後に取得する先行して取得する土地等について適用されます。
・法人
法人が平成21年1月1日以後に取得する先行して取得する土地等について適用されます。
■上記から感じること
何といっても、適用を受けるためには、個人は取得をした日の属する年の翌年3月15日までに、法人は取得の日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに(平成21年1月決算法人のように平成21年4月30日前に提出期限を迎える場合は4月30日まででした)、届出が必要なので、失念することがないよう注意が必要です。
10年間にわたる特例ですので、かなり先の所得計算に影響が出る場合がありますので、圧縮記帳可能時に失念することがないよう、これまた注意が必要です。
譲渡所得の申告時に比較的注意が払える個人はともかく、法人については適用を失念するリスクにはかなり注意が必要で、法人税確定申告書添付の勘定科目内訳明細書や固定資産台帳の適用欄に注意書きを記載しておく等対策が必要かと思われます。
複雑な税制が増えて、プロとしては腕の見せどころが増えるもののリスク管理には頭が痛いところですが、平成21年及び平成22年に土地取得を検討している事業者である個人や法人にとっては、大きな検討要素のひとつとなりますので、十分に活用したいところです。
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