平成21年(2009年)税制改正でこうなるNo.10。住宅ローン控除(住宅ローン減税)の延長・拡大(個人)
前回に引き続き、平成21年(2009年)税制改正によりどこがどう変わったのか概要を確認して行く「平成21年(2009年)税制改正でこうなる」シリーズの第10回。
今回は、平成21年(2009年)税制改正の最大の目玉ともいえる、住宅ローン控除(住宅ローン減税)の延長・拡大(個人)についてです。
■従来の住宅ローン控除(住宅ローン減税)の概要
住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは、住宅を新築・購入・増改築等をして住宅ローンを利用し、自らが居住する人に対して、毎年の年末時点のローン残高の一定割合を所得税から控除する制度です。
制度は、毎年異なるので注意が必要ですが、平成20年に入居の場合は、下記の表の通り控除期間10年の原則と15年の特例の選択適用が可能で、適用期限が平成20年12月31日までに入居した場合までであることから、延長されるか否かが以前から注目されていました。
居住年 | 区分 | 控除年 | 対象借入限度額 | 控除率 | 最大控除額 |
平成20年 | 原則 | 1~6年目 | 2,000万円 | 1.00% | 160万円 |
7~10年目 | 0.50% | ||||
特例 | 1~10年目 | 2,000万円 | 0.60% | 160万円 | |
11~15年目 | 0.40% |
なお、適用を受ける年分の所得3,000万円以下、住宅ローンの期間10年以上、登記簿上の床面積50㎡以上等の適用条件を満たすことも必要です。
■住宅ローン控除(住宅ローン減税)の改正の概要
住宅投資は内需拡大の柱であり、景気拡大として地域経済への大きな波及効果を見込め、国民の将来の豊かな住生活の実現に役立つものであるため、下記の改正が行われました。
【制度の延長と拡大】
適用期限が5年間延長され、下記の表の通り、控除対象借入限度額、控除率の引き上げとそれによる最大控除額(全対象期間合計)の引き上げが行われました。
居住年 | 控除期間 | 対象借入限度額 | 控除率 | 最大控除額 |
平成21年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.00% | 500万円 |
平成22年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.00% | 500万円 |
平成23年 | 10年間 | 4,000万円 | 1.00% | 400万円 |
平成24年 | 10年間 | 3,000万円 | 1.00% | 300万円 |
平成25年 | 10年間 | 2,000万円 | 1.00% | 200万円 |
【長期優良住宅に関する特例の創設】
平成21年6月4日施行の「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に規定する認定長期優良住宅に該当する一定のものに関する特例が創設され、その控除期間、対象借入限度額、控除率等は、下記の表の通りとなりました。
居住年 | 控除期間 | 対象借入限度額 | 控除率 | 最大控除額 |
平成21年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.20% | 600万円 |
平成22年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.20% | 600万円 |
平成23年 | 10年間 | 5,000万円 | 1.20% | 600万円 |
平成24年 | 10年間 | 4,000万円 | 1.00% | 400万円 |
平成25年 | 10年間 | 3,000万円 | 1.00% | 300万円 |
【居住要件の緩和】
従来は、当初居住年の12月31日時点で居住していないと住宅ローン控除(住宅ローン減税)の適用を受けることができませんでしたが、当初居住年に居住の用に供していたことを証する届出等の一定の要件を満たせば、転勤先から帰ってきて再入居した際に適用を受けられることができるようになりました。
【増改築等の要件の緩和】
従来は、増改築等を行った場合の住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、既に居住の用に供されていた家屋のみ認められていましたが、居住者が所有する家屋について、居住の用に供する前に増改築等をして、6ヶ月以内に居住の用に供した場合には、適用を受けられることができるようになりました。
【個人住民税の住宅ローン控除(住宅ローン減税)の創設】
従来は、住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、原則として所得税だけ適用があり、個人住民税については適用がありませんでした。
ただし、平成19年税制改正により、国から地方への税源移譲に伴い、平成19年分以降に従来は引き切れていた控除額が所得税から引ききれなくなった残額につき、市区町村に申告することにより住民税から引くことができる特例が設けられていました。
平成21年税制改正では、住宅ローン控除(住宅ローン減税)の控除額増加に伴い、所得税で控除できなかった残額を、課税所得総額×0.5%(最大97,500円)を限度に、市区町村への特別な申告を必要とせずに当年分の住民税から税額控除する制度が創設されました。
また、従来の税源移譲に伴う平成18年以前入居者の市区町村への申告も、源泉徴収票に必要事項が記載されること等により、不要とされました。
【改正事項の適用時期】
「制度の延長と拡大」→平成21年1月1日以後に自己の居住に供する場合から適用
「長期優良住宅に関する特例の創設」→平成21年6月4日以後に認定長期優良住宅を自己の居住に供する場合から適用
「居住要件の緩和」→平成21年1月1日以後に自己の居住に供しなくなった場合から適用
「増改築等の要件の緩和」→増改築等した居住用家屋を平成21年1月1日以後に自己の居住に供する場合から適用
「個人住民税の住宅ローン控除(住宅ローン減税)の創設」→平成22年度から平成35年度までの各年分の個人住民税につき適用
■上記から感じること
正に「大盤振る舞い」といえる改正です。
個人資産のポートフォリオ(構成割合)について、「持家」か「賃貸」かという議論があり、近年は金融専門家を中心に「賃貸」とし金融資産で運用した方が長期的には有利という意見が多くなっているようですが、住宅ローン控除(住宅ローン減税)、低金利という条件をも考慮すると「持家」という選択肢は相変わらず有力と言わざるを得ず、「持家」を選択される方もやはり多いのではないかと思われます。
ただし、日本のバブル期の住宅金融公庫のゆとり返済制度、アメリカのこのたびのサブプライム・ローンでの返済不能事例を見てわかるとおり、常に最悪の場合のリスクを想定し、借り過ぎには十分なご注意を。
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