21年3月期に間に合うよう継続企業(Going Concern:GC)の前提に関する注記とその監査の規定が猛スピードで見直し。
既に、日本経済新聞を始め各種報道がなされているとおり、21年3月期に間に合うよう継続企業(Going Concern:GC)の前提に関する注記とその監査の各種規定が猛スピードで見直し。
・「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部改正(案)」平成21年3月27日金融庁
http://www.fsa.go.jp/news/20/sonota/20090327-4.html
・「監査基準の改訂に関する意見書」平成21年4月10日金融庁
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/tosin/20090410.html
・「継続企業の前提」に関連する実務指針改正案に対するご意見の募集について」平成21年4月10日日本公認会計士協会
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1113.html
実務上違和感を感じざるを得なかった、不確実な経済環境下で企業と監査人に過度な責任を求めるものと言わざるを得ない、従来の継続企業(Going Concern)の前提に関する注記(GC注記)と監査の規定、私は見直しに賛成です。
■継続企業(Going Concern:GC)の前提に関する注記とは
現代の企業会計の基礎前提として、企業は永久に継続する継続企業(Going Concern)と仮定されます。
「継続企業(Going Concern:GC)を前提とした会計基準に準拠し財務諸表は適正だが、実は企業の継続自体が危ない」という時に、財務諸表の利用者は監査人は継続企業の前提の保証までしてくれているはずだと理解し、一方、監査人は自身の責任は会計基準への準拠の適正性の判定にとどまると主張し、いわゆる「期待ギャップ(Expectation Gap)」という問題が生じます。
この問題については、従来から国際的には監査人が一定の責任を負う制度が設けられており、わが国でも国際的調和の観点から、継続企業(Going Concern:GC)の前提に関する注記とそれに対する監査の制度が、2003年に導入されました。
■現行の継続企業(Going Concern:GC)の前提に関する注記と監査の制度
・注記
貸借対照表日において、債務超過等財務指標の悪化の傾向、重要な債務の不履行等財政破綻の可能性その他継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合には、以下の事項を注記しなければならないとされます。
1 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
2 継続企業の前提に関する重要な疑義の存在
3 当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応及び経営計画
4 当該重要な疑義の影響を財務諸表に反映しているか否か
・監査
監査人は、継続企業の前提に重要な疑義が認められるときには、以下の対応が必要です。
当該疑義に関して合理的な期間について経営者が行った評価、当該疑義を解消させるための対応及び経営計画等の合理性を検討しなければなりません。
その重要な疑義に関わる事項が財務諸表に適切に記載されていると判断して無限定適正意見を表明する場合には、当該重要な疑義に関する事項について監査報告書に追記する必要があります。
財務諸表に適切に記載されていないと判断した場合は、当該不適切な記載についての除外事項を付した限定付適正意見を表明するか、財務諸表が不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載する必要があります。
経営者がその疑義を解消させるための合理的な経営計画等を提示しないときには、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならなず、意見不表明とせざるを得ない場合があります。
継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には,継続企業を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し,その理由を記載する必要があります。
■21年3月期からの見直し(案)
・注記
継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合で、解消又は改善するための対応をしてもなお重要な不確実性がある場合に、以下の注記を行います。ただし、貸借対照表日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合、注記は不要となります。
1 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
2 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
3 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
4 当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別
・監査
監査人は、継続企業を前提として財務諸表を作成することの適切性に関して合理的な期間について経営者が行った評価を検討しなければならず、 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在すると判断した場合には、以下の対応が必要です。
当該事象又は状況に関して合理的な期間について経営者が行った評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを確かめなければなりません。
重要な不確実性が認められる場合は、継続企業の前提に関する事項が財務諸表に適切に記載されていると判断して無限定適正意見を表明するときには、継続企業の前提に関する事項について監査報告書に追記する必要があります。
財務諸表に適切に記載されていないと判断したときは 、当該不適切な記載についての除外事項を付した限定付適正意見を表明するか、財務諸表が不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載する必要があります。
経営者が評価及び対応策を示さないときには、十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがあるため、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならず、意見不表明とせざるを得ない場合があります。
継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には、継続企業を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない点は変わりありません。
■わかりやすく整理すると
上記は、少々わかりにくいので簡単に整理すると以下のとおりです。
・経営者は、解消又は改善するための対応をしてもなお重要な不確実性がある場合のみ注記
従来は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合、直ちに注記が必要でした。
・監査人は、合理的な期間について経営者が行った評価及び対応策につき検討し、なお重要な不確実性が認められるか否かを確かめる。
従来は、合理的な期間について経営者が行った評価、当該疑義を解消させるための対応及び経営計画等の「合理性」を検討しなければなりませんでした。
■上記から感じること
現行の規定は、継続企業の前提(Going Concern:GC)に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合、直ちに注記が必要なこと、実務上は経営計画等の「合理性」が示せないと監査人が意見を不表明とせざるを得なかったことから、リーマン・ショック後の世界金融危機下においては、企業に市場からの退出を過度に求め、監査人に経営自体の評価を過度に求めているとの違和感を感じざるを得ませんでした。
企業経営はそもそもリスクをとってリターンを求めることであり不確実性を伴うことは当たり前なのですから、表向きは国際基準との調和化が理由とされる今回の見直し、私は実情に沿った合理的な改正と捉え、賛成させていただきます。
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