税制改正案の陰に隠れていましたがこれは重要な情報です。税務上認められる役員給与の減額事例の明示。国税庁「役員給与に関するQ&A」最新版を公表。
平成20年12月12日公表の与党税制改正大綱の陰に隠れていましたが、国税庁が「役員給与に関するQ&A」最新版を平成20年12月17日に公表。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf
リーマン・ブラザースの経営破綻で一気に火を噴いた世界金融危機の中、業績が悪化した企業においては、役員給与の引き下げは経営の改善に重要な手段。
役員給与を引き下げた場合でも、平成18年税制改正で厳格化された定期同額給与として損金算入される場合が明示された「役員給与に関するQ&A」、中小企業経営に関与する者にとって、これは重要な情報です。
■平成18年税制改正で厳格化された定期同額給与
近年の法人税法の改正で中小企業経営に最も大きな影響を与えたのが、平成18年税制改正で厳格化された定期同額給与。
原則として会計期間の初日から3ヶ月を経過する日まででないと、全額損金算入される定額同額給与の額の改定ができなくなったのは大打撃。
中小企業においては、本当に慎重に役員報酬額を毎期決定する必要が生じました。
■業績悪化改定事由による改定
今までも、法人税法施行令第69条第1項第1号ハで、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」による全額損金算入される定額同額給与の額の改定が容認され、法人税法基本通達9-2-13で、それは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないと留意事項が示されていました。
■平成20年12月版「役員給与に関するQ&A」
法人税法基本通達9-2-13の解釈とその具体例が例示されました。
「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく,経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上,役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになるとの解釈がまず示されました。
そして、例えば,次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられると具体例が例示されました。
① 株主との関係上,業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において,役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため,取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から,経営状況の改善を図るための計画が策定され,これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
■上記から感じること
今までの法人税基本通達9-2-13の文面では、業績悪化改定事由による全額損金算入される定額同額給与の減額改定について、かなり限定的に解さざるを得ないのではという印象がありました。
特に③の具体例については、かなり幅広く解釈できるのではないかと思われ、これは中小企業経営に関与する我々にとって朗報だと思います。
ただし、役員報酬の決定についいては、その他に、資本金1億円以下の中小企業の留保金課税の課税対象除外、法人と個人の税率差、前年の住民税負担等、さまざまな要素を考慮する必要がありますので、慎重な判断が必要な点は変わりはありませんが。
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