「信頼を醸成するアナウンスメント」、「親密で小規模な共同体」の新たな再構築で希望再興へのビジョンを。村上龍氏「希望復興へビジョン描け」(2009年1月6日付日本経済新聞「経済教室」)
2009年1月6日付日本経済新聞「経済教室」に作家村上龍氏が登場。
私も受信している(申し訳ありませんがなかなか読めていません)メール・マガジン「JMM」を主宰するなど経済問題についても詳しい村上龍氏、昨年9月のリーマンショック以来の異常ともいうべき信用・信頼収縮について、冷静沈着に見事な分析を披露してくれています。
■世界的な信用収縮への現状認識にズレ、危機意識の欠如
村上龍氏は、今回の信用収縮に対し、主に政府とマスメディアに現状認識のズレ、危機意識の欠如の印象があるとします。
例えば、麻生首相の来年度予算に対する「生活防衛のための大胆な実行予算」という命名は、輸出主導の製造業を中心とした国家経済モデルが崩壊するかもしれないという時に、その内容もアナウンスも無邪気すぎ、今回の危機は循環的なものではなく、歴史的な大転換期かもしれないという仮説に立ったシュミレーションと将来的ビジョンが必要だと思うのだがほとんど感じられないとします。
マスメディアも、米ゼネラル・モーターズ(GM)など米国のビックスリーへの救済問題を人ごとのように報じているうちに、その間トヨタ自動車をはじめとした日本を代表とする企業が今年度の赤字転落を公表し危機は回復の可能性を探ることさえできない未体験の領域に突入してしまったとします。
■社会各層の利害対立で不信の連鎖が発生
そして、与党と野党、与党内の各グループ、管僚と政治家、内閣と議会、経営と労働、正規社員と非正規社員、富裕層と中間層と貧困層、自治体と中央政府、老年層と若年層、国家と国家といった、さまざまな社会各層の利害対立が顕在化し、不信の連鎖が起こりやっかいな悪循環が始まっているように見えるとします。
■悪循環への対抗策
村上龍氏は、一部分にフォーカスして対策を実行しても効果は限定的なものであるとし、悪循環への対抗策として、①信頼を回復させるための複数の対立項を結ぶ情報の開示と正確な現状認識であるアナウンスメントによる短期的な対応、②悪循環が始まっているシステムと考え方から離れた新しい別のシステムの構築による中長期的対応が考えられるとします。
■信頼を醸成する客観的事実のアナウンスメント
具体的には、まずは、経営側を悪役とする労働側に沿った派遣切りの報道等により対立と不信を増幅させるのではなく、各層間の信頼を醸成する客観的な情報の提供と事実のアナウンスメントがマスメディアに求められ、高度成長期以前の日本は貧しく、国民皆保険、下水道等のインフラも不十分で、1950年代初頭の平均寿命が男女とも60歳そこそこだったことから考えても、日本が以前より悪くなっているわけではないことをアナウンスする必要があるとします。
■「環境」と「親密で小規模な共同体」の新たな再構築とそのビジョン共有による希望再興
そして、中長期的には、高度成長期に失われたもの、「環境」と「親密で小規模な共同体」を新しく再構築することが重要で、そのビジョンを共有することが希望を発生させる装置として有効となるとします。
■上記から感じること
村上龍氏は、現在の信用・信頼収縮について、何となく我々が感じていることを、見事に言葉にしてくれてたと思います。
我々の身近なところに置き換えてみるならば、「信頼を醸成する客観的事実のアナウンスメント」はマスメディアだけでなく正に「会計」の役割でもあり、「親密で小規模な共同体」は正に我々中小企業がその典型であり、私もささやかながらでありますが、希望再興へのビジョンへ何らかのお手伝いをできるよう心がけて行きたいと思います。
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