2008年10月の全国企業倒産、悪化が加速。「倒産件数、2005年4月以降で最多。負債総額は2番目の高水準」(帝国ニュース2008年11月12日号より)
2008年10月の全国企業倒産の集計が、民間信用調査機関の大手2社、帝国データバンク(帝国ニュース2008年11月12日号)、東京商工リサーチ(同社WEB)から相次いで公表されました。
2005年4月に集計基準を変更している帝国データバンクの見出しは「倒産件数、2005年4月以降で最多。負債総額は2番目の高水準」、東京商工リサーチの見出しは「倒産件数が今年最多の1,429件、上場企業倒産が月間最多の8件発生」。
倒産件数が増加しており、悪化が加速していると見てよさそうです。
■帝国データバンクの集計
・倒産件数
1231件(前月1122件、前年同月1083件)で、前月比9.7%の増加、前年同月比13.7%の増加となり、2008年7月の1131件を抜いて集計基準変更の2005年4月以降で最多を記録し、2008年1~10月の累計は1万524件と1万件を突破とのこと。
要因背景としては以下が挙げられています。
①建設、不動産業での大型倒産続発を受け、焦げ付き発生による連鎖倒産が増加
②景気後退により資金繰りに苦しむ中小・零細企業の倒産が全業種で増加
③原料高関連の倒産が73件発生、前月の78件に次ぐ過去2番目の高水準
・負債総額
倒産件数が増加していること、
9790億1500万円(前月5兆3197億9400万円、前年同月4416億6900万円)で、前月比は81.6%の減少となったものの、前年同月比は121.7%の大幅増加となり、集計基準変更後では前月に次いで2番目の高水準となったとのこと。
■東京商工リサーチによる集計
・倒産件数
前年同月比169件増、13.4%増で今年最多となり、また10月としては、2002年(1,730件)以来6年ぶりに1,400件を上回ったとのこと。
産業別では、小売業と運輸業が今年最多を記録したほか、建設業は4カ月連続で400件を超え、不動産業も前年同月比約5割増(38→56件)となったとのこと。
・負債総額
前年同月比5,464億5,300万円増、118.4%増で、前月に続いて1兆円を上回り、負債10億円以上の倒産が今年2番目の94件発生するなど大型倒産多発が影響したのこと。
・その他
上場企業倒産が前月(7件)を抜いて、月間最多の8件(1月~10月累計27件)発生し、このうち不動産・建設関連は7件(1月~10月累計20件)を占めたとのこと。
形態別では、破産が過去最多の885件となったとのこと。
■上記から感じること
上場企業から中小企業までまんべんなく件数が増加しており、形態別でも破産が過去最多となっており、悪化が加速し、深刻な状況といってよいようです。
今後、当ブログでもご紹介している、追加経済対策、「生活対策」による中小企業向けの緊急保証枠の拡大が実施される予定です。
しかし、帝国ニュースの、「政策の効果はあくまで当面の資金繰りを乗り切るための一時避難的なものにとどまり、直接的に企業を取り巻く事業環境の改善につながるわけではないことには留意すべきだろう。このことは、98年10月の「特別保証制度」導入直後、倒産が一時的に減少したものの、その後再び急増した当時の状況をみても明らかである。」という指摘には十分に耳を傾けるべきでしょう。
いつも同じことを繰り返し書かせていただき恐縮ですが、われわれ中小企業経営に携わる者は、創意工夫を重ねることにより、収益から費用を差し引いた利益を少しでも多く生み出し、企業価値を高めて行くという原理原則を着実に実行して行き、自力で荒波を乗り切って行くことが何よりも重要になると思います。
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