独自の切り口と言葉、冷静な損得勘定に思わず相槌を打ちたくなる中小企業経営の良書。児玉尚彦「会社のお金はどこへ消えた?―“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」
経理合理化プロジェクトで、中小企業の経理業務の簡素化に取り組んでいる児玉尚彦税理士の新刊、「会社のお金はどこへ消えた?―“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」(2008年8月)が発売。
児玉尚彦税理士が、これまでに1,000人以上の社長と会い、「いったいどうやってお金の問題を解決しているのか?」を聞いて回り、お金の失敗と知恵を、「お金を呼び込む59の鉄則」としてとりまとめたのが本書とのこと。
59の鉄則には目からウロコというような特別なものはありませんが、既に語りつくされた言葉を反芻することなく独自の切り口と言葉を用い、感情的になりブレたりしない軸足のしっかりした冷静な損得勘定に、思わず相槌を打ちたくなる中小企業経営の良書です。
バブル崩壊後の90年代、花王株式会社などを先頭に先進的な上場企業はコストの削減と決算短縮化のため事務処理のスリム化の徹底を推し進め、私もとある企業グループで事務処理のスリム化の徹底に取り組みました。
私が会計事務所を独立・開業して、まず感じたのは、中小企業は高度成長期時代の管理に強い会社ほど良い会社とという考え方を信じ込んだまま、事務処理のスリム化にあまりにも大きく立ち遅れているということでした。
そこで、中小企業の事務処理のスリム化の提案とお手伝いに徹底して取り組んで来ましたが、同時期に経理合理化プロジェクトを立ち上げ、全国的規模で同様の取り組みをされてきたのが児玉尚彦税理士。
児玉尚彦税理士の、「キャッシュレス、伝票レス、社員レス!ココまでできる経理の合理化―経理の人件費と作業時間が半分以下になる101の改善策」(2004年4月)は、類書が今でもあまりなく、経理簡素化のバイブルといってよい画期的な本。
児玉尚彦税理士の新刊、「会社のお金はどこへ消えた?―“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」は、画期的というほどの驚きはないものの、既に語りつくされた言葉を反芻することなのない独自の切り口と言葉使い、その冷静な損得勘定に思わず相槌を打ちたくなる中小企業経営のポイントが満載。
特に、独自の切り口として、私が面白いなと思ったのは次の二つのポイント。
・「借入限度額は、キャッシュフローから逆算され、年間の粗利益に近づく」
粗利益を100、減価償却費を除く固定費を75、利息5とすると利払い後のキャッシュ・フローは20となり、理想的な債務償還年数を5年とすると、20×5年=100の借入限度額は粗利益に近似するとのこと。
荒っぽいおおまかな仮定ではありますが、中小企業の社長の実務感覚からするとわかりやすいかもしれません。
・「税金を払わないようにするのではなく、税金の支払いを有利にコントロールしながらお金を増やしていく」
会社は、無理に法人税を節税しても、源泉所得税や消費税をとられたり、課税のタイミングをずらしているだけだったりするので、大事なことは、税金を払わないようにすることだけでなく、税金の支払いを少し有利にコントロールしながらお金を増やしていくこととのこと。
これに関してはまったくの同感です。
法人税を払いたくないあまりに無駄なキャッシュ・アウトをしかえってお金が減ってしまう事例を本当によく目にします。
児玉尚彦税理士の「会社のお金はどこへ消えた?―“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」、私も大変刺激になります。
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コメント
菅井先生
「会社のお金はどこへ消えた?キャッシュバランス・フローでお金を呼び込む59の鉄則」著者の児玉尚彦です。
この度は、菅井先生のブログで拙著を2冊もご紹介いただき、本当にありがとうございます。
プロの会計士の先生に、”同感”とコメントしていただき、とても光栄です。
特に、借入金と税金の項目に関しては、実際に経営者からの反響が最も多いところです。
さすが、企業経営者にご指導をされている先生は、目の付け所が鋭いと敬服いたしました。
今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。
菅井先生のご活躍と貴事務所の益々のご発展を祈念いたしております。
(株)経理がよくなる 『経理合理化プロジェクト』
代表 税理士 児玉尚彦
投稿: 児玉尚彦 | 2008年10月 3日 (金) 16時08分
児玉先生
コメント、ありがとうございます。
また、過分にお褒めいただき恐縮です。
児玉先生にはいつも注目させていただいておりますので
今後のさらなるご活躍を期待いたします。
投稿: Accounting&Music | | 2008年10月 4日 (土) 23時04分