国を挙げての事業承継円滑化の機運をとらえた非上場株式評価に関する力作。牧口晴一税理士・齊藤孝一税理士「非公開株式譲渡の法務・税務」
当ブログでも続けてご紹介している、中小企業庁による、「非上場株式の評価のあり方に関する委員会」がまとめる形での非上場株式の価格算定の指針の年内作成。
そうした国を挙げての事業承継円滑化の機運をとらえた力作が、7月に発売された、牧口晴一税理士・齊藤孝一税理士「非公開株式譲渡の法務・税務」(2008年)。
本作は、経験豊かな実務家らしい、名義株の対処法や「譲渡承認等申請承認」による自社株の取得等の書式も含めた具体的手続についての詳細な記述も特筆点ですが、非上場株式の評価についての語らずにはいられないというような熱い議論が注目です。
■筆者について
牧口晴一税理士は岐阜県で、齊藤孝一税理士は愛知県で、それぞれ開業されている経験豊かな実務家であり、名古屋大学法学研究科で浜田道代教授の指導を仰ぎ、非公開株式の譲渡の法務・税務の研究に入られたらしい。
したがって、随所に浜田道代教授の考え方が反映されているようです。
■非上場株式の評価について
本書では、非訟事件であり積極的に公表されていないと指摘しつつも、平成17年と最近のものも含め非公開株式の評価を巡る裁判例を一覧表の形で分析しながら、非上場株式の評価について、私見も述べられています。
牧口晴一税理士・齊藤孝一税理士によると、譲渡制限株式の譲渡等証人請求に係る評価は、会社法144条の「譲渡制限等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。」という規定を論拠に、時価純資産方式を重視すべきであり、ゴーイングコンサーンを前提とした譲渡の局面では法人税等の控除もすべきではなく、株式平等の原則の観点から「財産評価基本通達に基づく配当還元方式」についてはかなり厳しく批判されています。
■本書から感じられること
本書から感じられるのは、非上場株式の評価についての語らずにはいられないというような熱い議論です。法律や税務の本にありがちな無機質な印象はなく、著者のつばきが飛んできそうな迫力を感じます。
非上場株式の評価についてのこれだけの熱い議論は、以前当ブログでご紹介した、1993年の「株式等鑑定評価マニュアル」の作成の中心的メンバーであった高橋義雄公認会計士「非公開株式 鑑定・評価の実務―キャッシュフロー法による鑑定・評価実務を中心に」(2000年)以来のような気もいたします。
また、上場株式に関しての橘玲氏「臆病者のための株入門」(2006年)などにも言えるのですが、株式の評価に関する議論は、汲めどもつきぬものがあり、知的好奇心の対象として抜群の面白さがあると思います。
中小企業庁による非上場株式の価格算定の指針を、機会に面白い議論がこれからも期待できそうです。
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