こちらもやはり来ました信用保証協会による公的信用保証の拡充。 「政府経済対策、中小支援に4000億円 資金繰り円滑化」 (2008年8月28日付日本経済新聞より)
既にご紹介しているように、住宅ローン減税の存続・拡充、証券税制の改正などの景気対策が騒がしくなってきましたが、やはり、信用保証協会による公的信用保証の拡充も話題に上ってきました。
2008年8月28日付日本経済新聞によると、政府が29日にまとめる総合経済対策の概要が明らかになり、
・中小企業の資金繰り支援へ向け4,000億円を拠出、一部を2008年度補正予算に計上
・資金繰り支援では、各地の信用保証協会による公的信用保証の充実が柱
・政府は同協会に保険金を支払うための中小企業金融公庫の準備金を積み増す
・協会の保証余力が膨らみ、貸倒率が5%とすると、金融機関はさらに8兆円貸せる(4,000億円÷5%=8兆円)
とのことであるそうです。
■信用保証協会による公的信用保証の拡充
日頃から資金繰りに頭を悩ませている中小企業にとては、大変ありがたい話だと思います。
■従来の債権者としての信用保証協会
公的資金が投入されていることから、事業再生の局面において、長い間、債権譲渡もしなければ債権放棄もせず、法的整理においても賛成をなかなかしないという、なかなか手強い相手であり、場合によっては事業再生の重大な障害になりえる場合もありました。
■最近の債権者としての信用保証協会
最近は、2000年の民事再生法施行後は法的整理においても以前よりは賛成票を投じるようになりましたし、2005年8月からはサービサーやファンドへの簿価での債権譲渡、2006年1月からはサービサーやファンドへの時価での債権譲渡、債権の直接放棄が可能となっています。
■最近の債権者としての信用保証協会の実情と長期的視点
しかし、公的資金が投入されている信用保証協会による、債権放棄や、サービサーやファンドへの時価での債権譲渡は、条件等のハードルが高く、現実にはまだまだ難しいようです。
そのあたりの事情は、川野雅之企業再生コンサルタントが、「中小企業再生完全マニュアル」で大変熱心に説明されています。
川野雅之企業再生コンサルタントは、私も何回か貴重な助言をいただいたことがある中小企業の事業再生の精通者であり、信用保証協会付融資のリスクについてはかなり辛口の考え方を持っていますが、大変参考になります。
川野雅之企業再生コンサルタントによると、現在、中小企業が金融機関に対して融資を申し込んでも、出てくるのはほとんどが保証協会付であり、保証協会付融資の場合には、直接あるいは債権譲渡後の、一部弁済による債務免除等の解決策がとりにくくなるので、「お金を借りてよいのか?」という長期的視点での検討が重要とのことです。
「中小企業再生完全マニュアル」ですが、資金繰りに余裕のある中小企業の経営者も含め、ぜひ一読いただくことをお勧めいたします。
■上記から感じること
私の実務感覚からすると、保証協会付融資が多いから事業再生が無理とは言い切れないかとは思われますが、「お金を借りてよいのか?」という長期的視点は大変重要だと思います。
以前の記事「中小企業の借入限度額の目安について考える。」でも述べましたが、年間の借入金の返済額(A)<税引後の当期純利益(B)+減価償却費(C)でないと理屈上は借入金が返せないという原理原則が大切だと思われます。
そして、弁済原資が(B)+(C)であるということは、実効税率約40%である我が国の法人税等を支払った残りの税引後の当期純利益を原資に返済するということですから、いかに借入金の返済が大変なことかおわかりになるかと思われます。
したがって、ファイナンス理論では、借入等の負債によるレバレッジ効果の利用は効果的と説明されることが多いですが、オーナー社長の個人保証により「実質的無限責任」ともいえる我が国の中小企業においては、お金を借りなくてよい経営をいかにするかが重要かと思われます。
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