金融大国英国(イギリス)に学ぶ。「年100万円までの株投資、配当非課税10年間継続 金融庁要望案」(2008年8月26日付日本経済新聞より)
自民党の麻生太郎幹事長が、8月9日に、1人当たり300万円までの株式投資について配当金を非課税とする「証券マル優制度」(仮称)の創設を提案。
財務省の杉本和行事務次官は、8月11日の記者会見で、麻生案について、2008年度の税制改正から金融所得課税の一体化を進めているのでこの措置を確実に実施し、証券市場が活性化することを望んでいるとし、具体化に慎重な姿勢。
住宅ローン減税に引き続き、証券税制の平成21年度(2009年)税制改正についても、だんだん騒がしくなってきましたが、今日(2008年8月26日)の日本経済新聞によると、小口投資家向けの配当非課税制度や高齢者投資非課税制度などの、金融庁が月内に財務省に提出する2009年度税制改正要望案の全容が判明したようです。
金融大国英国(イギリス)に学んだらしい、小口投資家向けの配当非課税制度が注目です。
■証券税制についての金融庁の2009年度税制改正要望案
日本経済新聞によると、概略は下記のとおりです。
・小口投資家向けの配当非課税制度
10年間、上場株式の配当金を無税(現行は10%)にするよう要望。
対象となる投資額を年100万円までと例示。
10年の期間中の投資額を累積し、合計1000万円までの無税化を明記。
・高齢者投資非課税制度
株式、投資信託について500万円以下の譲渡益を非課税。
100万円以下の配当金を非課税。
「第二の年金」と位置づけ、株式などへの投資を促すことが狙い。
2009年から少なくとも2年間、導入するよう求める。
■ 英国(イギリス)で導入されている「ISA(個人貯蓄口座)制度」が参考
日本経済新聞によると、小口投資家向けの配当非課税制度は、英国(イギリス)で導入されている「ISA(個人貯蓄口座)制度」を参考に、日本版の創設を目指したものであるとのことです。
ISAは年7200ポンド(約145万円)までの投資や預金に対し、配当・譲渡益や利子を無税とする制度だそうです。
また、日本版の導入については、対象期間を10年間とし、短期売買を抑制する一方で長期保有の促進を狙うとのことだそうです。
■証券税制についての金融庁の2009年度税制改正要望案から感じること
以前の記事でも指摘しましたが、現行の金融商品の課税制度は、私どもプロの目から見ても大変複雑で、複数種類の金融商品から生じた所得と損失が、所得の相違により損益通算できないことも多く、分散投資を行う投資家にとっては納得が行かない点が多々ありました。
複数種類の金融商品から生じた所得と損失の損益通算不能が、預金から投資への流れを阻害していた面は否定できず、平成21年分の所得税から適用の、上場株式等の譲渡損失と上場株式等の配当所得との損益通算の特例の創設などの、金融所得の一体課税へ大きく踏み出そうとする最近の改正動向は好ましいことだと思います。
今回の金融庁の2009年度税制改正要望案については、基本的には、金融所得の一体課税への流れを阻害するものでなければ、預金から投資への流れという観点からは評価できるものではないでしょうか?
ただし、英国(イギリス)で導入されている「ISA(個人貯蓄口座)制度」は、株式の譲渡益や預金の利子をも対象とした制度だそうであり、上場株式の配当のみを対象とした小口投資家向けの配当非課税制度は、格差是正という制約があるのはわかりますが、金融所得の一体課税という観点からは、英国(イギリス)にまだまだ後れをとっている印象は否めないようにも思われます。
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