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実務家として期待したいと思います。「非上場株の価格算定へ指針 中小企業庁、後継者の相続支援 」(2008年7月17日付日本経済新聞)

 以前より拝見させていただいている、澤村八大公認会計士のブログ「M&A会計士がゆく」や、「信託大好きおばちゃんのブログ」でも紹介されていますが、2008年7月17日付日本経済新聞によると、中小企業庁は非上場株式の価格算定の指針を年内にも作成するとのこと。

 業種、資産内容などに応じた具体的な算定方法を「収益還元方式」、「配当還元方式」、「類似業種・企業比較法式」、「純資産価額方式」の4方式を軸に明示し、中小・零細企業の経営者が死亡した際などに、親族に分散しがちな株式の金銭的な価値を示すことで、株式を後継者に集約しやすくするそうです。

 また、当該指針は、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本弁護士連合会の代表らでつくる中小企業庁長官の私的研究会「非上場株式の評価のあり方に関する委員会」(委員長・岡村正日本商工会議所会頭)がまとめるそうで、税務、法務の関係者が集まって審議し、将来的には国税庁の財産評価基本通達への反映も目指すそうです。

■非上場株式の価格評価の指針

H200719  従来、非上場会社株式の価格評価の指針としては、日本公認会計士協会経営研究調査会から、平成5年11月9日に「株式等鑑定評価マニュアル」、平成7年8月に「株式等鑑定評価マニュアルQ&A」が公表されていました。

 しかし、公表から10年以上の年月が経過し、企業価値評価の手法も時代とともに変化していたため、日本公認会計士協会経営研究調査会から、平成19年5月16日に経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」(以下「ガイドライン」)が新たに公表されました。

 写真は、清文社から市販されているものですが、日本公認会計士協会のサイトから無償でダウンロードできます。

■企業価値評価ガイドラインの問題点

H200719qa  新しい「企業価値評価ガイドライン」は、その前文によると従来の「株式等鑑定評価マニュアル」に代わるのものとの位置づけだそうですが、従来の「株式等鑑定評価マニュアル」には記載されていた、それこそオーナー経営者への株式の集約等の基本事例等がガイドラインでは省略されてしまい、我々、中小企業の非上場株式の評価に携わる者にとって、残念ながら使い勝手が悪くなった部分があると言わざるを得ません。

 また、あまり理論的でないとの評価なのか、収益還元法もインカム・アプローチにおける評価法の「その他の評価法」にまで格下げになり、名称も「利益還元法」として紹介されています。

 要するに、新しい「企業価値評価ガイドライン」は、従来の「株式等鑑定評価マニュアル」のような中小企業等での紛争解決のための非上場株式の価格評価の指針というより、M&Aのための企業価値評価(バリュエーション)の指針という傾向が強くなったような印象があります。

 したがって、現時点では、新しい「企業価値評価ガイドライン」に関与された方にお聞きした話ですと、基本的な考え方が変わったわけではないようですから、中小企業等での紛争解決のための非上場株式の価格評価に携わる方が、写真の商事法務研究会から刊行されていた「株式等鑑定評価マニュアルQ&A」(1995年)などに掲載されている、従来の「株式等鑑定評価マニュアル」を参考にすべき局面もいまだに多いのではないでしょうか?

■中小企業庁の非上場株式の価格算定の指針への期待

・中小・零細企業等での紛争解決のための指針としての期待

 日本弁護士連合会も加わっているようですので、中小・零細企業等での紛争解決のための指針として大いに期待できます。公認会計士協会だけでは、どうしても踏み込みが弱くならざるを得ないでしょう。

・収益還元法の再評価の期待

 日本経済新聞の報道を見ると、算定方法として「収益還元方式」が紹介されており、詳細は不明ですが、一般により理論的とされるDCF法(ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法)よりも、収益還元法(一般に将来の予想年間税引後利益÷資本還元率)が重視されているようにも見受けられます。

 大規模上場会社のように一定水準の精度が確保された損益及び収支計画が作成されていない中小・零細企業等においては、詳細な将来の収支予測等が必要となるDCF法の採用は困難であるとともに馴染まない場合もあるため、インカム・アプローチ(収益方式)として、決算書の数値に基づき計算が簡素で比較的恣意性が排除できる収益還元法の適用を再評価してもよいのではないかと思われ、個人的には期待しております。

・税務との整合性の確保の期待
 従来も、会計上の指針等に基づき合意された取引価額が、国税庁の財産評価基本通達による評価額と乖離した場合には常に贈与税課税等の問題があり、財産評価基本通達6「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」に解決を求めざるを得ないのではないかとも言われていました。

 日本税理士会連合会も加わっておりますので、日本経済新聞の報道どおり、将来の財産評価基本通達への反映にもぜひ期待したいところです。

■新しい「企業価値評価ガイドライン」の問題点

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