平成20年(2008年)税制改正でこうなるNo.22。法人の寄附金税制の改正(法人税等)
今回は、法人の寄附金税制の改正です。
法人税法上、寄附金は、無制限に損金として認めると税負担の減少分だけ国が寄附金を負担することになり好ましくない側面があるため、一定の限度内に限り損金として認められますが、今般の公益法人の制度改革に伴い寄附金を促進する観点から、
・日本赤十字社などの特殊法人、学校法人、社会福祉法人などの特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額について
・所得基準を所得金額の2.5/100から5/100相当額に拡大する
の改正が行われました。
■従来の制度
・寄付金とは?
法人税法上の寄附金とは、贈与や無償の供与の形で行われた財産的給付のうち、法人の事業に直接関係ないものと解されます。
・寄附金の損金算入時期
法人税法上、寄附金については、現金主義が採用され、会計上で未払金により費用計上しても税務上は現実に支出するまで寄附金がなかったものとされ、会計上で仮払金により資産計上しても税務上は寄附金があったものとされ、申告書上調整が必要となります。
・寄附金の損金算入限度額
法人税法上、寄附金は、無制限に損金として認めると税負担の減少分だけ国が寄附金を負担することになり好ましくない側面があるため、下記のように寄附金の内容によって異なる損金算入限度額の範囲内で、損金として認められます。
1.一般の寄附金の限度額
資本金等基準:(資本金+資本積立金)×当期の月数/12×2.5/1,000
所得基準:当事業年度の所得金額(寄附金損金算入前)×2.5/100
限度額=(資本金等基準+所得基準)×1/2
2.特定公益増進法人等に対する寄附金の限度額
独立行政法人、地方独立行政法人、日本赤十字社などの特殊法人、公益法人のうち科学技術の試験研究や学生に対する学資の支給を行うもの、学校法人、社会福祉法人などの特定公益増進法人に対する寄附金
特定非営利活動を行う法人(NPO法人)のうち一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けた認定NPO法人に対する寄附金
については、1.の一般の寄附金の限度額と別に下記の損金算入限度額が認められています。
1.の一般の寄附金の限度額と
特定公益増進法人等も対する寄附金の合計額
のいずれか少ない金額
3.国・地方公共団体に対する寄附金及び財務大臣の指定した寄附金
全額損金算入が認められています。
■改正の概要
・特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額
所得基準を所得金額の2.5/100から5/100相当額に拡大するの改正が行われました。
すなわち、特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額は下記のとおりとなります。
資本金等基準:(資本金+資本積立金)×当期の月数/12×2.5/1,000
所得基準:当事業年度の所得金額(寄附金損金算入前)×5/100
(資本金等基準+所得基準)×1/2
特定公益増進法人等も対する寄附金の合計額
のいずれか少ない金額
一般の寄附金の限度額の計算上の所得基準は、当事業年度の所得金額(寄附金損金算入前)×2.5/100のままですので、ご注意ください。
■適用時期
この改正は、平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
■法人の寄附金税制の改正から感じること
「民間が担う公共」を目指した今般の公益法人の制度改革に伴い、寄附金を促進する観点からの改正かと思われます。
寄附金は、本来は個人で行うのが原則かと思われますが、損金算入限度額が拡大されることにより、法人による寄附金という選択肢が従来より広がることは好ましいことかと思われます。
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