平成20年(2008年)税制改正でこうなるNo.18。工事進行基準の適用範囲拡大等(法人税、所得税等)
今回は、工事進行基準の適用範囲拡大等です。
企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(平成19年12月27日 企業会計基準委員会)が公表されたのを受け、
・工事進行基準が強制適用される長期大規模工事の範囲を工事期間1年以上、請負金額10億円以上に拡大
・長期大規模工事以外の工事で損失が生じると見込まれるものについても任意適用可能
・工事進行基準の対象にソフトウェアの受注製作が追加
・工事進行基準による未収入金も貸倒引当金等の適用対象
にする改正が行われました。
■従来の制度
・「工事進行基準」と「工事完成基準」の意義(「工事契約に関する会計基準」より)
「工事進行基準」とは、工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法をいいます。
「工事完成基準」とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行
った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法をいいます。
・工事進行基準が強制適用される長期大規模工事の要件
1.工事期間
着手の日から目的物の引き渡しまでが2年以上でること
2.請負金額
50億円以上
3.請負金額の支払
1/2以上が目的物の引き渡し日期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていなこと。
・工事進行基準を任意適用できる長期大規模工事以外の工事の要件
2事業年度にまたがる工事契約については、工事進行基準により経理したときは、工事進行基準を適用することができます。
ただし、着手事業年度以後のいずれかの年度の確定決算で工事進行基準より経理しなかった場合のその事業度以後、損失が生ずる見込に至った等の事由が生じた場合のその事業年度以後は工事進行基準が適用不能です。
■工事進行基準の適用範囲拡大等
・工事進行基準が強制適用される長期大規模工事の範囲
工事期間要件を2年以上から1年以上に、請負金額要件を50億円以上から10億円以上に、それぞれ見直されました。
・工事進行基準を任意適用できる長期大規模工事以外の工事の要件
長期大規模工事以外の工事で損失が生ずると見込まれるものについて、工事進行基準を適用することができることとされました。
・工事進行基準の対象
ソフトウエアの受注制作が加えられました。
・工事進行基準の適用により計上した未収金に対する貸倒引当金制度等の適用
その発注者を債務者とする金銭債権として、貸倒引当金制度等を適用することとされました。
■適用時期
法人の場合は、原則として、平成20年4月1日以後に開始する事業年度に着手する工事から適用されます。
個人の場合は、原則として、平成21年中に着手する工事から適用されます。
■工事進行基準の適用範囲拡大等から感じること
この改正は、会計と税務を整合させること意図したものかと思われます。
ところが、「工事契約に関する会計基準」及び「工事契約に関する会計基準の適用指針」によれば、工事契約から損失が見込まれる場合は、工事損失が見込まれた期に工事損失引当金を計上し、その繰入額を売上原価に含めなければならないとされますが、税務上の工事進行基準の適用上、損失の見込額を一時の損失とすることは容認され得ないと解される等、整合性にはまだまだ問題があると言わざるを得ません。
実務上も、工事進行基準の適用にあたっては、会計と税務の整合に十分留意する必要がありますのでご注意ください。
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